しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

 アニメブロガーの年末恒例記事。今年は久しぶりに10選に到達できる程度にアニメを見られたので、2018年以来の2度目の参加です。集計は「aninado」さんが行ってくれるとのこと。
 選出ルールは以下の通りです。
ルール
・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

* * * * *

【選出話数】(放映時期別五十音順)
〇春(4月~6月放送)
『デジモンゴーストゲーム』第24話「歪ンダ愛」
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』第73話「炎の中の希望」
『舞妓さんちのまかないさん』第33話「キヨちゃんはいつも通り」
〇夏(7月~9月放送)
『Extreme Hearts』第9話「SNOW WOLF」
『シャインポスト』第7話「伊藤紅葉は《戻らない》」
『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』第5話「ランプの章」
『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第10話「故郷の空」
〇秋(10月~12月放送)
『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』すてっぷ④「DIYって、どこでも・いごこち・よくなるよ」
『ぼっち・ざ・ろっく!』第3話「馳せサンズ」
『ヤマノススメ Next Summit』第5話「登山部からの挑戦!?/武甲山で愛のムチ?」

選評は以下に続きます。
また、選出話数のみをニコニコのマイリストでつなげてみました(配信中作品のみ)ので、dアニメストアのニコニコ支店に入られている方はこちらでも。


デジモンゴーストゲーム』第24話「歪ンダ愛」



脚本:中山智博/絵コンテ:鈴木正男/演出:佐藤道拓
演出助手:田中雅史、難波 涼、長谷川和哉
総作画監督:西野文那/作画監督:北野幸広、大山康彦、佐藤敏明、酒井夏海、大西陽一、Y.M.Lee、Y.S.Kwon
制作進行:阿部 悟

 ゴーストゲームにおけるデジモンは、基本的に「人間とは価値観も文化も全てが異なるもの」として描かれています。故に「自分とは全く価値観が異なる存在と交流すること」が作品のテーマとなるのですが、ホラーというジャンルも手伝って、そこには大きなハードルが存在することを改めて感じさせる作品でもあります。それが最も顕著に表れたのがこの24話。異形の者と人間との間に生まれる愛を描いたエピソードですが、

愛する人間と同じになること」を求めた異形の者=アヤタラモンが、自身の身体から不要なものをもぎ取っていき実質的に自害をしてしまう(※ネタバレ防止のため、一応伏せ。クリックで表示)

という壮絶な結末にはなかなかの衝撃を受けました。時代の変化と共にフィクション作品における描写にも気を遣うことの多い昨今、朝のキッズアニメ枠でこのようなオチを描けたのは結構すごいことだと思っています。一概に「コンプライアンスが作品をつまらなくしている」みたいなことを言いたいわけではないですし、露悪的だったり後味が悪かったりする描写を入れれば面白いというわけでもないのですが、それでもこういう展開を朝にできるよと示した意義は大きいのではないかと。そんなところも踏まえて選びたくなる一篇でした。

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ドラゴンクエスト ダイの大冒険』第73話「炎の中の希望」



脚本:千葉克彦/演出:宮元宏彰
演出助手:広末悠奈、重矢葉月
総作画監督:香川 久/作画監督:横田 守
制作進行:梶原航平

 自分自身は原作未読なのですが、そんな自分にも伝わるほどにスタッフ・キャストの原作愛が溢れていた『ダイの大冒険』。その中でも、明らかにトップクラスの気合を入れて作っているのが伝わったのがこの73話でした。絶体絶命の状況に対して足掻き続ける緊迫感と、まさかの救世主の登場。それら全てをドラマチックに演出していたと思います。
 そして、この回の主役はなんといってもハドラーでしょう。最初のボスとして登場し、哀しい中間管理職から強力な好敵手へと成長を遂げていったハドラー。最期のその時に主人公たちと通じ合うのはいかにもジャンプ漫画らしい展開ですが、そんなところも含めて人気のヴィランなのはよくわかります。個人的には、キャストクレジットにて関智一さんを単独・トメの位置に置いていたのがすごくグッときましたね。アニメそのものとはちょっと違うところですが、こういうところに垣間見えるキャラクターと役者へのリスペクトがすごく素敵だなと思いました。

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舞妓さんちのまかないさん』第33話「キヨちゃんはいつも通り」

脚本:山川 進/絵コンテ・演出:鈴木洋平
作画監督:大木良一
制作進行:石塚有咲、川口耕平



 「名前を呼ぶ」ということは、そこに相手の存在を認めるということ。目をかけている舞妓(=百はな)の友人であるという"まかないさん"(=キヨ)のことを適当な名前で呼び続ける百子さん姉さんは一見人当たりが良いようで、言外に「あなたのことなど知らないよ」と感じさせるような、どこか恐ろしいものがあります。まあ、実際この時点では詳しく知らないわけなので、"見定めている"という方が近いかもしれませんが。そしてそれは別に意図的にやっているわけではなく、芸妓として生きていく中で自然と身についた生き方なのかなと思います。
 そんな視線にも全く動じずいつも通りであり続ける姿がお眼鏡に適ったのか、はたまた彼女の作る料理が美味しかったか、改めてキヨに名前を尋ねる百子さん姉さん。一般の人間関係に当てはめると失礼に当たるかもしれませんが、厳しい芸の世界に生きる人間と、その傍にいて彼女たちの「日常」であり続ける女の子ならではのとても痺れるやり取りでした。

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『Extreme Hearts』第9話「SNOW WOLF」



脚本:都築真紀/絵コンテ:細田雅弘、吉田 徹/演出:細田雅弘、いたがき しん
総作画監督:新垣一成
作画監督:吉田智裕、西田美弥子、宮地聡子、久松沙紀、アルベルト・キエ、石井ゆみこ、ENGI
プロップ作監:岩畑剛一/アクション作監:吉田 徹、板垣 伸
制作進行:五十嵐達也/制作進行補佐:廣澤匡胤


 トーナメントを勝ち上がりながらだんだんとチームメンバーが集まっていき、前回までで勢ぞろいしたところで迎える準決勝。決勝戦には序盤から因縁を作っていたライバルチームが控えていて、ともすれば消化試合にもなりかねない状況ですが、準決勝の対戦相手であるSnowWolfについて「キャラクターの魅力・愛嬌」「負けられない理由(バックボーン)」「主人公サイドとの交流」を一気に描き、視聴者に「この人たちにも負けて欲しくないな」と思わせるところまで持っていったのが素晴らしかったです。その上でしっかりと試合描写も挟み、決着までを描き切る。必要な要素を全て1話の中に盛り込む筆力にただただ感服するエピソードでした。
 SnowWolf、というかミシェルの魅力の一環ですが、市ノ瀬加那さんの声が存分に味わえるのもひとつアピールポイントだと思います。『ひとりぼっちの○○生活』で初めてお名前と声を認識して以来好きな声優さんの一人なのですが、今年はスレッタ(水星の魔女)を筆頭にいろんなところで声を聞くことができてうれしかったですね。

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『シャインポスト』第7話「伊藤紅葉は《戻らない》」

脚本:樋口達人/絵コンテ:及川 啓/演出:宅野誠起
総作画監督:清水慶太、今西 亨、福田佳大/作画監督:小畑 賢、冨永一仁、芝田千紗、佐賀野桜子、泉坂つかさ
担当制作:矢澤雅大


 及川啓監督ならではのギャグシーンがふんだんに盛り込まれたエピソード。会話のテンポやリアクション芸、画面の隅での小ネタなど空いている箇所を埋め尽くすようにギャグを入れていくので、話そのものはスムーズに進んでいくのが及川監督らしさですね。この回で印象的なのはやっぱり「130円になります!」だと思います(笑)。
 しかしながら、そうしたギャグ多めの作りはあくまでも布石。この回の真骨頂はラスト2分の急展開でしょう。第7話とシリーズ後半に差し掛かるタイミングでもあるので、キャラクターの見え方を変えるような事実を明かすことで全体のターニングポイントとしているのが上手かったと思います。話数を重ねて馴染んできた「噓をついている人間が輝いて見える」というギミックの使い方も効果的で、引きのカットが強く印象に残る回でした。

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『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』第5話「ランプの章」

脚本:熊谷 純/絵コンテ・演出:渡部穏寛
総作画監督:北村友幸/作画監督:上西麻耶、清水勝祐、星野玲香、STUDIO MASSKET
制作進行:小島圭太

 「ツッコミを間違えると時間が巻き戻される」という不思議な状況の下、長距離バス移動中の会話劇のみで構成されたいわゆる「ループ回」。巻き戻るごとにちょっとずつループのルールを把握し、トライアンドエラーで進んでいく様子が(神の視点で見る分には)とても楽しく、キャラクターの愛らしさも良く出ていたと思います。動きの少ないワンシチュエーションが続く分、会話そのものも視聴者に飽きを感じさせないテンポ感が意識されていて小気味よい仕上がりに。隙間を埋めるように差し込まれるちょっとしたボケにもクスクスと笑わされました。30分喋り続けるエピソードなので、小島菜々恵さん、鈴木愛奈さん、小山百代さんの3人のキャストの魅力に依るところも大きかったですね。
 ワンアイディアを貫き通したオムニバス性の高いお話で、こうした回を評価できるのが話数単位ならではの魅力だな、と思える回でした。

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『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第10話「故郷の空

脚本:森 悠/絵コンテ・演出:春藤佳奈
総作画監督:潮月一也、崎本さゆり、高野晃久
作画監督:浅井昭人、細田沙織、関口 渚、上野あさみ、綾部美穂、鮫島寿志、和田賢人、清水勝祐
使い魔作監:大高美奈/モブ作監:西澤真也
制作進行:山本知輝


 第501統合戦闘航空団=ストライクウィッチーズガリア(フランス)にもたらした、ネウロイの支配からの解放。それが喜ばしいことなのは間違いありませんが、その土地に生きていた人々にとって、その先に待っているのは「ネウロイが支配していた故郷」に目を向けることでもあります。破壊された故郷を知ってしまうことの怖さ、そして、実際に目にした時の言葉にならない感情……こうした、最前線の戦いとはまた違うところでの戦時下の人々の気持ちに目を向けるのはまさにルミナスウィッチーズならではの視点ですね。
 ガリアにてフラッシュバックするエリーの半生は、その見せ方が出色の出来でした。生まれ育った村を捨てざるを得なかった幼き日と、続く戦火の中で野戦病院の看護師という生き方を選んだ少女時代。いずれも辛い過去と言えるでしょうが、それを暖かなピアノの調べに乗せて描くセンスがたまらなく好きです。そして、それと同じくらいに美しくも切ないのがラストのジニーとモフィの別れ。「使い魔が見えるのはウィッチだけ」という前提の元、台詞なしに全てを理解させる演出が心に突き刺さりました。ルミナスは話数選定ですごく悩んだのですが、この作品の"らしさ"が最も出ているのはこの回だったかな、と思います。

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『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』
すてっぷ④「DIYって、どこでも・いごこち・よくなるよ」

脚本:筆安一幸/絵コンテ・演出・作画監督:米森雄紀
作画監督補佐:古橋 聡、けろりら、福永智子
制作進行:奈良牧人


 DIYはとにかくぷりんが良かったので、必然的にぷりんが目立つ回を選びました。せるふとぷりん、こじれてしまっていた幼馴染の関係がジョブ子の登場によって再び動き出す……こうした新しい人の登場による変化こそが人と人との関わりの醍醐味だと思います。せるふとぷりんだけでなく、ホームステイを通してジョブ子とぷりんの関係自体も作られていくのもまたDIYの良かったところ。似た者同士の2人が会話する夜のシーンは、その静けさがとても美しかったですね。成り行きでですが、丸一日使って友達と一緒に自宅のロフトを改造するというシチュエーションも「休日の過ごし方」としてとても充実しているように思えて、そんなところにも魅力を感じるお話でした。
 また、DIYといえば作画面にも触れないわけにはいきません。4話で言うとラストの「自転車を漕ぐせるふ」の大胆なレイアウトに度肝を抜かれましたが、個人的にはその前の、玄関先でぷりんが軽く背伸びをする足元を映したカットも非常に好きでしたね。

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『ぼっち・ざ・ろっく!』第3話「馳せサンズ」



脚本:吉田恵里香/絵コンテ・演出:山本ゆうすけ
作画監督:中村 颯
制作進行:染野 翔


 『ぼっち・ざ・ろっく!』は実写映像の挿入を筆頭にアニメーションに限らない演出表現が多い作品でしたが、その皮切りになったのがこの第3話だった気がします。ペープサート、アイデンティティ(風船)の破裂、偽エンドカードなどなど、アイディアが盛りだくさんの映像でした。
 シナリオ的には、結束バンドのギターボーカル・喜多ちゃんの本格参戦回。後藤ひとりの奇行に驚きながらも乗ってくれるビートボックスのくだりからしてとてつもない可愛さ&いい人さで、視聴者に良い第一印象を与えるには十分だったことでしょう。そして何より、ひとりが喜多ちゃんにギターを教え始めるラストが良いんですよね。ひとりの演奏に、まだたどたどしい喜多ちゃんの演奏が重なっていく。こういう「初心者が一歩目を踏み出す瞬間」がとても好きです。全体的にギャグアニメ寄りのハイテンポで進む回でしたが、このラストの演奏はじっくり間を取って聴かせるのも心憎いつくりでした。

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ヤマノススメ Next Summit』第5話「登山部からの挑戦!?/武甲山で愛のムチ?」

【Aパート】
脚本・絵コンテ・演出:山本裕介
総作画監督松尾祐輔/作画:松本憲生
制作進行:村上 光

【Bパート】
脚本・絵コンテ:山本裕介/演出・作画監督:福地和浩
総作画監督松尾祐輔
制作進行:武井 諒


 シリーズ初の30分枠でOAされたヤマノススメ4期。相当なスケジュールの良さ故か、そして作品としての方針もあるのか、実力派アニメーターたちの個性あふれる作画回が次々に繰り出される恐ろしいアニメでした。
 5話から9話までは15分×2話の構成。5話のエピソードももちろんどちらも良いのですが、選出の決め手となったのはやはりAパートの松本憲生さん一人作画回ですね。フェティシズムに溢れた着替えシーンやアンニュイな表情の数々などは非常に色っぽいのですが、同時に技術のすごさにも圧倒されるので作風を崩さない程度に品の良さを残しているのが素敵だなあと。全体的な構図(レイアウト)もダイナミックで、目で見て楽しいアニメでした。

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* * * * *

【総括】
 ここ数年は見るアニメの本数も少なくなり、好きな回はあっても10本にすら満たない、という感じだったのですが、今年は下半期を中心に1クール枠も豊作で久しぶりにこうした記事を書けるまでに至りました。夏アニメはとにかくアイドル・音楽枠が重なっていて、今回選出した『ExH』『シャインポスト』『ルミナスウィッチーズ』の他にも鉄板の『ラブライブ!スーパースター!!(2期)』、漫画原作らしく手堅くまとまった『神クズ☆アイドル』などがありました。この5本は音楽モノという共通項がありつつ、それぞれが違う魅力を持って同時期に放映されていたのがすごかった……という話で本当は1本ブログを書きたかったんですが、時期を逸してしまったのは少し心残りだったり。続く秋アニメでは『ぼざろ』『DIY』『ヤマノススメ』と、日常系(寄り)のジャンルに超高品質作品が固まっていたのが面白かったですね。他にも『水星の魔女』のような話題作なんかもあり、数年ぶりの「見たい新作アニメが毎日ある」状態でとても楽しかったです。
 今回選んだ中だと、個人的にイチオシの作品は『ルミナスウィッチーズ』。わざわざアニメでブログを書くような好事家に受ける作風だと思いますし、単話の完成度が高い作品なので話数を問わず票が集まっていると嬉しいなと。ドキドキしながら集計結果を楽しみにしています。ちなみに、『舞妓さんちのまかないさん』33話はNHKワールドJAPANでは2021年に放送済みだったようなので厳密にレギュレーションを適用するとアウトかもしれないですが……該当局の視聴方法がやや特殊なのと、ワールド版とEテレ版で内容にも一部変更があるようなのでセーフとさせてください(この辺のことに気付くだいぶ前から選びたかった話数なのです)。

 それでは、来年もまたアニメを楽しめますように。