しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【映画感想】『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』

毎年恒例となった仮面ライダーシリーズ春映画の最新作。今年は『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』以来4年ぶりのスーパー戦隊との本格共演であり、脚本・監督も同じく『Z』以来となる米村正二金田 治のタッグ。

[予告編]


[感想] 
「本郷猛+ゲスト+『ゴースト』チーム」のみに人物が絞られていた昨年の『仮面ライダー1号』が顕著ですが、近年の春映画は「現行作品世界を春映画ナイズする」という形だったためある程度1つの作品として纏められていたように思います。しかし本作は『1号』の本郷や『3号』の黒井のような作品を牽引する強力なキャラクターもおらず、また『ディケイド』や『ゴーカイジャー』のように歴代ヒーローを内包した世界観を持つ作品をフィーチャーしているわけでもないため、「登場作品同士の設定のすり合わせに無理がある」「人物が多く話が散漫」「そもそものキャラクター描写に違和感」など数々の問題点が発生してしまった印象。 まあ見ていて 楽しいことは楽しいんですが、あまり健全な楽しみ方ではないと思います(苦笑)。

ストーリー
ドラマ面で軸となるのは仮面ライダーブレイブ/鏡飛彩ヘビツカイシルバー/ナーガ・レイ の2人。
ゲストキャラクターの少年・エイトに「かつて体が電子化する・感情を失う奇病を患い飛彩が担当医であった」という設定を付けることで現行のライダー・戦隊の両方のキャラクターを話に絡ませたのは上手いと思います。飛彩のツンデレ系キャラ造形は米村先生との相性も良かったのか素直にかっこよかったですし、ナーガも時期的にまだキャラが固まっておらず大変だったであろう中で山崎さんが熱演されていたのが印象的でした。ただ、 その病気について原因等の説明が一切ないとか、エイトを説得するナーガとポッピーがずっと変なポーズのまま固められてて話が全く頭に入ってこないとかツッコミどころは山ほどあるので、そのあたりは広い心を持って見ることが重要だと思います。

客演
本作には現行作品である『仮面ライダーエグゼイド』『宇宙戦隊キュウレンジャー』のキャラクターのほかアム/ジュウオウタイガーをメインとする『動物戦隊ジュウオウジャー』の面々、そして 劇中ゲーム『超スーパーヒーロー大戦』のキャラクターとして多数の歴代ライダー/戦隊のキャラクターが出演しています。出演自体は当然とてもうれしいのですが、例によって扱いが良かったとは言えないキャラも多かったかなあと。特に、実に14年ぶりの登場となった 仮面ライダーゾルダ/北岡秀一先生は「とりあえず有名な台詞を調べたのでそれをそのまま言ってもらいました!」としか言いようのないキャラ付けをされていていっそ清々しいなと思いました。ですがエグゼイドとゾルダに アオニンジャー/加藤・クラウド・八雲 ビートバスター/陣マサト仮面ライダー電王モモタロス を加えて結成された「チームエグゼイド」は良くも悪くも大戦作品ならではのごちゃ混ぜ感があって面白かったですし、八雲とモモタロスあたりの掛け合いも楽しいものになっていたと思います。それだけに彼らが変身する仮面戦隊ゴライダーが映画中では中盤の戦闘シーンのみで終わったのは残念ですし、 終盤の乱戦で再登場した際に何一つ役に立たないまま消滅させられるのは流石にふざけんなと思いました。永夢の「ゴライダーのみんな!」っていうセリフは何とも言えない間抜けさの中に友情が感じられて面白かったんですけどね。
チームエグゼイド以外の客演組では、ピンチのアムを救うシーンが多かったキョウリュウゴールド/空蝉丸は比較的扱いが良かったように思います。なぜか変身アイテムが『キョウリュウジャーブレイブ』のものになっているようですが……。アルファの声が本人だった『アマゾンズ』組に関しては ゲームの敵キャラとして出てきてエグゼイドに倒されるだけというあんまりな扱いだったんですが、あれは宣伝として効果あるんでしょうか?
また、客演とは少し違うかもしれませんが事前宣伝で推されていた貴利矢先生はCMの分がほぼすべて。ちなみにあのシーン、斬月・真には当然台詞がないんですが『 鎧武/ガイム』で呉島貴虎を演じていた久保田悠来さんがキュウレンジャーに準レギュラー出演しているのでもったいないな~という思いが……モモウラキンを揃えておいて電王ガンフォームまで台詞なしなのはサッパリわかりませんが。 

アクション
いわゆる原作オマージュ演出の少なさに定評のある金田社長ですので、その辺りは期待しない方が吉。ジュウオウジャーの野性解放くらいはやって欲しかったんですが……(イーグルが登場時に飛んではいたけど)。山場のブレイブVSトゥルーブレイブも暗所での戦闘にしたことでせっかくの劇場ライダーが薄れてしまって勿体無いなあと思います。
とはいえ悪い面ばかりでもなく、お馴染みの運動会……もとい乱戦のシーンでは普段見ないロケ地での立体的な戦闘が新鮮だったり、クライマックスのロボ戦で(誰のアイデアかわかりませんが)フタゴキュータマを使ってキュウレンオーを2体用意したのは劇場版らしいスペシャル感があって良かったと思います。細かいところでは「雑魚を相手しながらパズルを組み立てるパラドクス」の画がテレビでは見ないカッコよさで好きでした。また、本作は現在『キュウレンジャー』の劇伴を担当されている山下康介さんが単独で音楽を担当されていたので、要所要所でキュウレンジャーの劇伴が流れるのがナイスでした。

総括
例年物議を醸すライダー春映画。個人的には(紆余曲折を経て)「まあこれはこれで楽しいもんだな」と思えるようになったのですが、『3号』や元祖『スーパーヒーロー大戦』のようなハチャメチャな映画が好きな身としては今年はちょっとパワー不足というか、シンプルなつまらなさだったなあというのが初見での正直な感想。とはいえ逆に言えばそれらに比べて丸くなっているということでもあると思うので、人によっては「例年よりマシ」という感想にもなる……のかなあ(笑)。私自身はもうだいぶ感覚がマヒしている自覚はあります。
ただ、感想を書くために改めて思い返しているとドラマ面だけに注目して見ればまた違うのでは?という気もしてきたので、次に見るときはそうした姿勢で臨みたいと思います。劇場でまた見るかはわかりませんが……。