しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

 アニメブロガーの年末恒例記事、2年連続3度目の参加です。集計は「aninado」さんが行ってくれるとのこと。
 選出ルールは以下の通りです。

ルール
・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。


* * * * *

【選出話数】(放映時期別五十音順)

選評は以下に続きます。

『D4DJ All Mix』Jun.(第6話)「ハクチュウム」

シナリオ:佐藤亜美/絵コンテ:坂田純一/演出/CGディレクター:志賀健太郎

ライブパート絵コンテ:高橋直希/ライブパート演出/CGディレクター:山之口 創

 タイトル通りの白昼夢。「なぜか英語しか話せなくなってしまった真秀」というある種の中の人ネタ回*1なんですが、そんな不思議な夢の世界と現実の世界がやや不気味さを醸しながら混ざり合っていくエピソードです。それでも最終的には「真秀に負担をかけすぎていることを省みたハピアラの面々が、それぞれに協力し合ってライブを作り上げる」というお話に着地する……と見せかけて、まだまだ展開。果たしてどこまでが夢で、何が現実なのかが一見しただけではわからないような構成になっています。

 D4DJはCGアニメですが、そのデザインの印象も相まってこの回にはどこかアメリカンなホラー風味を感じるんですよね。ライブパートのゾンビ仕様ハピアラも、カワイイコスプレとかではなくてわりと本気で不気味さを感じる気合の入りよう。2023年最大の問題作として、いろんな意味で記憶に残るエピソードでした。

D4DJ All Mix/ディーフォーディージェーオールミックス Jun. | dアニメストア

『絆のアリル』第9話「~予測不能のアルティメット~」

脚本:赤尾でこ/絵コンテ:駒屋健一郎、川並卓弘/演出:うえだしげる

 何でもありのレースゲーム回にハズレなしの法則。次から次へと繰り出されるトラップが波乱を生み出すドラマは非常にテンポが良く、ミラクのリアクションの良さもあってひたすら楽しい回になっています。

 深夜帯らしからぬ女児アニメテイストが光った『絆のアリル』において、ひときわ女児アニ指数が高かったのもこの回でした。フェイクニュースに対するリテラシー教育が具体的かつ自然にシナリオに組み込まれているあたりが実にそれっぽい。単にねじ込むだけでなく、最終的にリズとミラクがつながるための布石になっているのも上手かったです。また、リズはしばらくのお預け期間を経てこの回でようやくの本格登場となりましたが、これ1本で彼女の魅力を存分に伝えられるエピソードでもありました。

絆のアリル 第9話 | dアニメストア

『ぐんまちゃん シーズン2』第6回「あおまのマンガプロジェクト/ぐんまちゃんインターネットを知る/オバケがでたぞ」

「あおまのマンガプロジェクト」

脚本:本郷みつる/絵コンテ・演出:宮田 亮

「ぐんまちゃんインターネットを知る」

脚本:本郷みつる/絵コンテ・演出:古謝和希

「オバケがでたぞ」

脚本:本郷みつる/絵コンテ:もりたけし/演出:宮田 亮

 ご当地キャラのゆるかわな画風と、風刺等々を盛り込んだシニカルな芸風とが上手くマッチしたアニメ『ぐんまちゃん』。ファンシーさとシニカルさが混ざり合っているという意味では、童話的であると言えるかもしれません。

 「何もしないプロデューサー」を皮肉りながら劇中劇としてなんともシュールなアニメを披露する『あおまのマンガプロジェクト』、リアルな温度感でインターネットのリテラシーについての話を繰り広げる『ぐんまちゃんインターネットを知る』。これらにシニカルなぐんまちゃんらしさが出ているとしたら、3本目の『オバケがでたぞ』はファンシーな魅力が強く出ているように感じました。夜にだけ会える、でも自分しか会えない不思議な友達との出会い。こうしたほっこりするエピソードはぐんまちゃんだと逆に(?)珍しいので、かえって印象的な回でした。

アニメ「ぐんまちゃん」シーズン2 第6話 | dアニメストア

『スキップとローファー』Scene.06「シトシト チカチカ」

脚本:米内山陽子/絵コンテ:篠原俊哉/演出:平向智子

 些細なすれ違いからギクシャクしてしまった志摩と美津未の仲直りまでが描かれた第6話。本音を出さず、「上手くやる」ことが染み付いている志摩くんにとって、とことん素朴で素直にぶつかってくる美津未は異質な存在です。だからこそすれ違いも生まれますが、伏せている本音を引き出すのもまた美津未のような存在なんですよね。予想外の言葉を返されて、思わずポツリポツリと本音をこぼしてしまう様子が素晴らしかったです。この2人の関係性がどうなっていくのかは分かりませんが、もしかしたら恋の始まりだったのかもしれない、そんな一瞬をドラマティックに描いた瑞々しく甘酸っぱい胸キュンエピソードでした。作中時期は梅雨ごろとあって、天候や光を感情とリンクさせた映像もGood。

スキップとローファー Scene.06 | dアニメストア

『スパイ教室』第18話(2ndシーズン第6話)「File 《夢語》のティア」

脚本:村上桃子/絵コンテ:大原 実/演出:ふじいたかふみ

 冬クール・夏クールの2期にわたってオンエアされたライトノベル原作アニメ。スパイによる"影の戦争"が活発になっている時代、養成学校で落ちこぼれの烙印を押されながらも一芸に秀でる少女たちで結成されたスパイチーム『灯』の活躍を描くシリーズです。

 原作は進むにつれてよりハードな展開になってはいるのですが、基本的にはコメディとシリアスのバランスがちょうど良いのがスパイ教室の魅力だと思います。短編集収録のエピソードをアニメ化したこの18話では、「恋愛」をキーワードにした物語が展開。結末こそスパイ的ではありますが、Aパートで描かれるサラのデート、そしてそれを監視する灯メンバーの反応は年頃の少女らしいかわいらしさがあって新鮮な魅力でした。

 本作はヒロインが多く、またシナリオの都合もあって全員の掘り下げが進んできたのもちょうどこの頃でした。時間こそかかってはいますが、それゆえに「この子はこういう子」というのが明確になっていること自体に面白さがある。デートの真相がアネットたちに伝わった瞬間、何を言わずとも視聴者全員に浮かんだであろう「オイオイオイ 死んだわアイツ」という感覚は、作品を通して見ているからこそ得られる情報量があって気持ち良かったですね。

スパイ教室 第18話 | dアニメストア

ポケットモンスター(2023)』第18話「そらとぶピカチュウ、どこまでも高く!」

脚本:松澤くれは/絵コンテ:冨安大貴/演出:中田 誠

 20年以上の歴史を紡いだサトシたちのアニメからバトンタッチした新アニポケ。偶然『SV』で久しぶりにポケモンゲームをプレイしたこともあり見始めたのですが、少年少女の冒険要素をひときわ強めた作風が刺さってすっかり楽しみな作品になりました。

 今回選んだのは、主人公たちの旅の拠点となる飛行船・ブレイブあさぎ号を取り仕切る"キャプテンピカチュウ"と、"戦うポケモン博士"フリードとの出会いを描いた過去エピソードです。回想パートのほぼ全編がシネスコサイズで作られた映像はグッと引き込まれる出来栄えで、いい意味でシリーズのベースから外れた作りになっているところに気合を感じます。主題歌をOPではなく本編ラストに流すあたりも同じく。

 「空を飛ぶ」という行為はそれ自体がロマンに溢れていますし、そんなロマンを通してピカチュウとフリードが相棒になるまでの過程がじっくりと描かれた見ごたえある回でした。また、ゲームの早期特典として通常は覚えない「そらをとぶ」を覚えているピカチュウをゲットできるキャンペーン*2があったようなのですが、アニメではまた違ったアプローチ(わざ)で「そらとぶピカチュウ」を描いているのがいいですね。

ポケットモンスター(2023) 第18話 | dアニメストア

アイドルマスター ミリオンライブ!』第10話「アイドルに大切なもの」

脚本:加藤陽一/絵コンテ:蔦 佳穂里/演出:山村 聡

 「アイドルマスターさん」はずっと近くて遠いような距離感だったのですが、アニメスタッフ・オンエア枠ともどもキッズアニメ風味があって見始めたミリオンライブ!のアニメは初心者にも優しく、楽しく見続けることができました。

 選んだエピソードは、静香が参加することになったチャリティーコンサートを通し、静香と父との和解を描いた第10話。家族を亡くした方々のためのコンサートとあって話数全体にもつつましやかな雰囲気が漂い、見る側も自然と居住まいを正すような厳かさがありました。劇中プロデューサーが言っていたようにどんな活動でも本質は変わらないのですが、「だれかに想いを届ける手段としての歌」はこういった雰囲気の回だからこそより強く描ける魅力だったのかなと思います。物語に説得力を持たせるのに十分な歌唱は、流石の静香cv田所あずささん。娘の芸能活動に反対していた父を、しかし父だからこそ知っている原初の想いが動かすのも素敵でした。

 個人的に好きなポイントは北沢志保さん。何やら自身も家庭環境に思うところがありそうで、不器用ながらも静香のことを気に掛けている様子が魅力的でした。ミリオン初心者の私ですが、アニメを通して北沢さんのことはだいぶ気になってますね。

アイドルマスター ミリオンライブ! 第10話 | dアニメストア

『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』第3話「無口な姫と騎士と武士」

シナリオ:山田靖智/絵コンテ・演出:五藤有樹

 「神様の手違いによって100人になった運命の人を全員平等に愛する」という突飛な設定で始まる新感覚ラブコメ。第3話は本が好きでもの静かな3人目の彼女・好本静ちゃんとの出会いのエピソードです。

 話すことが苦手な静ちゃんは、自身の愛読書からシチュエーションに合った箇所を探し出し、指さすことで会話をする一風変わった女の子。そんな彼女の個性は過去のトラウマにも紐づくものなのですが、それを知らずとも彼女に寄り添い、「目を見て話せるように」という前向きな理由から音声読み上げアプリを提案する主人公・恋太郎がまた魅力的。初登場のヒロインの魅力を描き、そんなヒロインを任せられると思えるほどにヒーローの魅力も描く。恋愛モノの基本が1話の中に詰まっていたのではないでしょうか。作品全体としては振り切ったバカエロラブコメの印象が強いですが、この回は非常にプラトニックなラブストーリーなのが作品の幅を広げているとも思います。

 映像もハイクオリティながら、この回で特にイチオシのポイントは音響面。先に述べたような静ちゃんの話し方ゆえに、彼女自身の台詞はモノローグを除きほとんど出てきません。それを補うように、このエピソードでは静ちゃんのシーンに重ねてピアノを主体とする穏やかな劇伴が頻繁に流れます。劇伴でキャラクターの心情を表現することはままありますが、台詞が無いからこそそうした使い方がより深く感じられるのがすごく良かったですね。告白シーンは劇伴も非常にドラマティックに盛り立ててくれましたし、静ちゃんの台詞もアプリによる読み上げだからこそ、場面に合わないほど明るい感情で発声されるのがかえって強く心に残りました。

君のことが大大大大大好きな100人の彼女 第3話 | dアニメストア

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』Layer 6「コノハを信じて!」

脚本:雑破 業/絵コンテ:大槻敦史/演出:水野健太郎(オーロックス)

 美少女ゲームの制作史を辿る同人マンガを原作とし、原作者の一人・若木民喜先生直々に書き下ろしたオリジナルストーリーで展開されたTVアニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』。シリーズ前半ではエロゲ史におけるターニングポイントとなった様々な時代へタイムリープして当時のネタを大いに盛り込みつつ、後半に行くにつれてぶっ飛びSF展開が広がっていくなどオリジナルらしい魅力に溢れる作品でした。

 今回はシリーズ中盤、1999年編のエピソードを選出。肝はやはり長尺のCパート、10億円という莫大な借金を返すために最高のゲームを作ろうとコノハが熱く語るシーンです。コノハがひたすらに美少女の力を信じているのは彼女が2023年の日本からやってきた人物だからですが、同時にメタ視点で言えば彼女もまた一人の「美少女」なので、彼女自身が「美少女の力」の体現者なんですよね*3だからこそ、コノハの言葉の裏に、その存在の裏に、今のこのアニメ・ゲームの文化を作り上げてきた人間たちの歴史を感じられたような気がして、すごく好きなシーンでした。コノハのシーンは全般的にそうなんですが、このシーンでは演じる古賀葵さんの熱量もひときわ強く感じられましたね。

16bitセンセーション ANOTHER LAYER Layer 6 | dアニメストア

『BEYBLADE X』第9話「ベイクラフター」

脚本:森地夏美/絵コンテ:内藤明吾/演出:長澤達也

 ベイブレードXの大きな魅力である、主人公トリオ・チームペルソナの異様なまでの可愛さ。中でも、風見バードくんと七色マルチさんの関係性はひときわ魅力的だと感じています。他のキャラクターたちに比べてベイの実力は一段も二段も劣るものの努力する姿勢は崩さず、大きなポテンシャルを秘めていることも示唆されているバードくんと、そんな彼の素質を見込んで時に呆れながらも世話を焼くマルチさんという関係ですね。マルチさんの性別が明言されていないことも相まってナチュラルに距離が近く、視聴者的にはけっこうドキドキしながら見ていたりもします。

 さて、今回選んだ第9話はまさにその2人の関係が強く描かれた回。敗戦続きのバードの新たな戦力として、「ベイクラフター」でもあるマルチが新しいベイを作成するエピソードです。ベイ作りに没頭するマルチのためにバードが手料理を振舞うシーンは彼がいかにもキッズアニメの主人公然としたキャラクターであるが故にギャップ萌えがありましたし、彼の心遣いをベイのコツになぞらえながらマルチとバードの2人で語らうシーンはとても微笑ましい一幕でした。その後のエキシビションバトルでの、「勝者はマルチだが、狙いであった場外アウトまでは持っていけなかった」というバードの成長の見せ方、そしてそんなバードを見たマルチの満足そうな笑みも良かったです。12話時点で未だバードの白星はありませんが、2024年は待望の初勝利をしてくれると信じてます!

【第9話】ベイクラフター【BEYBLADE X】 - YouTube

総括

 ま、間に合ってよかった~!今年は書き始めるのが遅くなって結構ハラハラだったんですが、なんとか年内に書くことができて良かったです。話数についてもそこまでじっくり選ぶ時間は無かったので直観的に選んでいますが、その分素直な好みが出ていたら良いなあと思います。だいたいキッズアニメとアイドルアニメとラブコメ回ですね。自分以外に選んでる人がいたら嬉しいなあと思うのがアリル9話とベイX9話、全体ランクで上位にあると嬉しいなあと思うのがスキロー6話と100カノ3話でしょうか。集計結果も楽しみです。

 それでは、来年もまたアニメを楽しめますように。

*1:明石真秀のcvを担当する各務華梨さんはアメリカ生まれのバイリンガル

*2:

早期購入特典で、特別な「ピカチュウ」を手に入れよう! | 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』公式サイト

*3:コノハちゃんはエロゲヒロインではないですが、まあ広い意味の萌えキャラということで