しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【小説感想】葵せきな『ゲーマーズ!』1巻〜10巻

昨夏のアニメで気に入って原作にも手を出したものの、活字習慣の無さもあって2巻くらいで止めてしまっていた『ゲーマーズ!』。どうやら原作自体も佳境を迎えているらしい、という情報を聞いて改めて挑戦したところあれよあれよと既刊分を一気読みしてしまったので、まもなく発売の11巻に備えながらの感想記事です。


アップデートされる「すれ違い青春錯綜系ラブコメ
本作のキャッチコピーである、”こじらせゲーマーたちのすれ違い青春錯綜系ラブコメ”。勘違いや思い込みといったディスコミュニケーションから明後日の方向へと向かっていく恋愛模様の愉快さが簡潔に表された良いコピーだなとアニメの頃から思っていたのですが、原作を読み進めるにつれこうした認識はまさに「アップデート」されることとなりました。

これ恋愛小説だ!

いやまあ、ラブコメと恋愛小説の違いとか深く考えないまま勢いで言ってみた部分もありますが、基本はコメディと言いつつも想定していたよりしっかりと登場人物の恋心に真剣に向き合ってる作品だなと感じました。「甘酸っぱい」とか「悶える」とかそんな風な感想が出てくるやつです。巻が進むにつれ誤解や思い込みは減っていき、先のキャッチコピーも「お互いがお互いを好いているが故に、納得のいく形での関係を構築するため模索を続ける恋愛群像劇」という印象に変化していくというか。

といってもシリアス一辺倒というほどではなく、(基本的には)感情移入を阻害しない程度かつ大変愉快なコメディも残っているのでポンポンと読めてしまう感覚。文章もテンポの良い掛け合いで進みながらも、ここぞというところでは素敵な表現で決めてくるのでなかなか読みやすいなと感じます。

恋愛レースの行方やいかに
完結に向かう中、やはり最も気になるのはこの点。改めて各ヒロインの状況を個人的な印象も交えて振り返ってみましょう。

天道花憐
恋愛においてこれ以上ないほどのアドバンテージである「すでに交際中」を敢えて投げ打った我らがメインヒロイン(笑)。雨野くんとの関係は”ある意味ではフツーの、しかしだからこそ微笑ましい高校生カップル”といった印象。デート時を筆頭にデレの破壊力は全ヒロイン中でもトップクラスながら、一人になるとおもしろ奇行お姉さんと化すのが吉と出るか凶と出るか……というところ。
なんのかんのメインヒロインという立ち位置的にも彼女のルートが物語としては最も「キレイに」〆られそうですし、いったん自ら投げ捨てたとはいえ一貫して雨野とは相思相愛である点を考えても報われてほしい思いもありますが、それには今一歩イベントが足りない気も。逆に言えばラストにひとつドでかい花火を打ち上げてくれれば十分に勝利を狙える位置にいると思います。

星ノ守千秋
最新刊(10巻)ラストにて絶賛爆弾投下中のワカメことぼっち系ヒロイン。雨野とは互いを知らないままの長く深いネット上のつながり、犬猿の仲な関係性の積み重ね、そして正体バレからの星空の下での告白と作中もっともドラマティックな恋愛をしている彼女。いやあ6巻のラストは思わず悶えてしまいましたね。
読者としてはツッチーヤマさんバレ以降の恋心を胸に秘める姿にキュンキュンしてしまうわけですが、そうしたキャラクター性ゆえに「実らぬ恋」が似合ってしまうのもまた事実。加えて、どうしても略奪愛になってしまう点が物語的にはややネックでしょうか。個人的には十分納得のいく範疇に収まっていると思うんですけどね。
しかしアニメからずっと好きだったこともあり、なんだかんだで最も応援したいヒロイン。がんばれワカメ。

亜玖璃
伏黒姉妹の登場や苗字判明などここ数巻にわかに印象を増してる気がしなくもないギャル系ヒロイン。「意表を突くエンド」という意味では雨野とくっついたら物語的にはある意味面白いかな……とも思いますが、やっぱり個人的には上原くんと幸せになって欲しいかなあ。(描写的に)余裕があればあまのっちとの関係性に何らかの決着をつける展開はあってもいいかもしれないですね。

星ノ守心春
コハルじゃなくてコノハ(正直未だに漢字だとパッと読めない)なエロゲマニア。登場後しばらくはアニメでの印象を遥かに上回る痴女っぷりに困惑したものですが、ここ数巻の「いい女」モードはまさに惚れ惚れしてしまうカッコよさ。「小悪魔系後輩キャラとか今更入るスキマないやろ……」などと思ってた自分を恥じております。雨野とくっつくイメージはなかなか湧きませんが、好きなヒロインの一人。本人に言ったらめちゃくちゃ嫌な顔するでしょうが、光正とフラグが建ち気味なのでそのまま行きそうな気もしなくはないですね。

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可能性あるのは素直にこの4人でしょうか(歩さんは外伝だし……)。個人的な見解としてはメタ視点も交えての予想なら【天道5:アグリ3:ワカメ2】、主観バリバリの願望なら【ワカメ5:天道4:コノハ1】って感じですかね。まあ予想はともかく主観ですら絞れてないのは考えようによっては恋愛に向き合う姿勢としてはダメダメなんですが、あくまで読者ですしヒロインみんな魅力的なのでということでひとつご容赦ください。

果たしてどういった結末になるのか。一人の人間に複数の好意が向いている以上、誰かが結ばれれば誰かが涙を飲むことにはなってしまいますが、可能な限り納得のいく展開になってくれることを祈っております。

というわけで今後が楽しみな『ゲーマーズ!』。11巻はまもなく10/20に発売となります。