しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

2020年の楽曲10選

はじめに

 こんな記事書いておいて本末転倒なんですが、音楽の魅力は文章でどうこう語るより音楽で聴いてこそ伝わるだろ!って思いもあるので、最初にSpotifyプレイリストとYouTubeの試聴動画再生リスト貼っておきます(配信の有無の都合でどちらも10曲コンプリートはできていないですが……)。今聞けないという方も、よろしければフォローなりブックマークなりしておいて暇なときに流してくれたら嬉しいです。お願いします!

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 昨年までアニソン縛りで毎年10選記事を書いてきましたが、今年からはその縛りを外し、純粋に「2020年の楽曲」内で10選を。なお、上半期時点での記事はこちら

 目次を兼ねて、選曲は以下の通りです。順番はアーティスト名五十音順。
  1. 記憶/イヤホンズ
  2. 声/内田 彩
  3. にゃんだーわんだーデイズ/大橋彩香
  4. We Remember/KiRaRe
  5. ネムルトビラ/熊田茜音
  6. RUN/Sexy Zone
  7. Cosmic CoaSTAR/Happy Around!
  8. それでもともに歩いていく/ハンバート ハンバート
  9. 水着とスイカ/Run Girls, Run!
  10. ルンに花咲く恋もある/ワルキューレ

  11. 総括

記憶/イヤホンズ

作詞・作曲・編曲:三浦康嗣 (□□□)



 5周年を迎えた声優ユニットイヤホンズの3rdアルバムより、リードトラックを選曲。イヤホンズは常に前衛的というか実験的な挑戦を続けているユニットですが、この楽曲はそうした挑戦の一つの到達点ともいえるのではないかと思います。提供したのはこちらも独創的な音楽性で知られるユニット・□□□(クチロロ)の三浦康嗣さん。曰く「□□□のアルバムを1曲に凝縮した」というだけあり、声優ユニットの楽曲としては初聴きの際にかなりの衝撃があるのではないでしょうか。

 生活音や環境音をトラックに取り入れ、歌唱……というよりも「語り」に近い三者の声によって一人の女性の人生を紡いでいく。それはまさに物語であり、実験的であると同時に「声優ユニット」としてやることに意味のある楽曲だとも思います。10月に開催されたオンラインショウでのライブパフォーマンスも印象的だったので(後日ラジオ番組で紹介された「『記憶』って歌えるんですね……」というリスナーの感想は実に的を射ているなと思いました(笑))、こちらも今後何かしらの形で見られるようになってほしいところ。
 ちなみにこの楽曲を収録したアルバム『Theory of evolution』はタイトルの通り「音楽の進化論」をテーマとしており、収録曲のすべてに「進化元」となる楽曲が存在します。『記憶』の進化元は2ndアルバム収録の『あたしのなかのものがたり』。こちらも同じく三浦さんの提供によるポエトリーな楽曲ですが、比較的ポップス寄りでとっつきやすいかな?という気がしますので、よろしければ合わせて聴いてみてほしいですね。



声/内田 彩

作詞・作曲・編曲:hisakuni



 内田彩さんは全曲追えているわけではないのですが、安定して良曲を出している印象があります。今回は3月にリリースされたシングルから、c/w曲を選曲しました。
 ピアノとストリングスのウワモノを中心に組み立てられた楽曲が内田さん自身の綺麗な高音域のボーカルとマッチしており、爽快感のある王道アニソンロックになっています。“強い”曲の条件として語られることも多い「2サビキャンセル」を含め、メロディの展開も実にドラマティック。これがカップリングで出てくるのはやはり強いなあ……と。まさに「隠れた名曲」といった評価が似合う楽曲になっているのではないでしょうか。

にゃんだーわんだーデイズ/大橋彩香

作詞:mitsuyuki miyakemihimaru GT
作曲:mitsuyuki miyakemihimaru GT), TAKAROT
編曲:TAKAROT



 2ndシングル収録『にゃんダフルらぶ』、4thシングル収録『にゃんダフルらいふ』と続いてきた大橋彩香さんのにゃんダフルシリーズ。その流れを汲んだにゃんこ楽曲第3弾にはショートアニメ『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』のタイアップがつき、わんこも加わってさらにパワーアップした楽曲となりました。そして『らぶ』『らいふ』同様、楽曲提供を行ったのはmihimaru GTのmitsuyuki miyakeさん&ミヒマル楽曲でもmiyakeさんと共作経験のあるTAKAROTさんのタッグ。個人的な話になりますが、mihimaru GTは初めてCDを買ったアーティストであり、音楽の好みの形成に多大な影響を与えているアーティストでもあります。活動を休止して久しいですが、今自分の中でもっともアツいアニソン・声優音楽のシーンで再びみっくんの曲を聴くことができるのは嬉しい限りですね。
 今回はシリーズの中でもより一層ノリが良く、キャッチーな仕上がりになっていたように思います。スクラッチやラップ展開の入り方も含め、過去最大級に"HIP-POP"なミヒマル風味を感じる楽曲でした。そして大橋さんの歌からもポジティブな感情が多く感じられてとても良い。声優アーティストでもトップクラスの人気を誇るイメージなのですが、それも納得の魅力的なパフォーマンスだと思います。

We Remember/KiRaRe

作詞:田淵智也
作曲・編曲:伊藤 翼



 2020年は本当に激動の1年であったがゆえに、そんな時代性を反映した楽曲も数多く制作されていたように思います。そうした楽曲群の中でも私がひときわ胸を打たれたのが、この『We Remember』でした。
 まずは何といっても歌詞ですね。これまでの当たり前が崩壊し、思うように声を届けられないもどかしさ。そんな中でも前を向き、やるべきことをやってみせるというエンターテイメントの矜持。そして、いつの日か再び日常を取り戻すんだという希望……この1年の間に音楽界を飛び交ったあらゆる感情がすべて詰め込まれているように感じました。ロックバンドの一員として、アニソン作家として、プロデューサーとして、様々な立場から業界を見て・考えている田淵さんならではの詞だな、というのも注目ポイント。全体としては直接的すぎない表現でまとめられているぶん、サビ頭の「会いたいよ」という言葉の重みもズシリと響きます。
 詞に限らず、曲や歌にも同じ想いは詰まっているように思います。こちらのインタビューでも言及されていましたが、今回の楽曲はKiRaReとしては新鮮な打ち込みサウンドが印象的。そこからはかつてないほどの危機感や、それに立ち向かう決意のようなものが感じられました。同じくインタビューでも言及されているようにKiRaReメンバーの歌唱にも、溜まったフラストレーションを爆発させるような強さがあり……平たく言ってしまえば、とにかく「シリアス」な曲だなと。KiRaReにはやはりその名の通りのキラキラ感やエモさのイメージがあるのですが、それとはまた別の、新境地となる魅力が出ているように思いますね。

 総じて、音楽業界に大きな変化が起こった2020年の現状に立ち向かうために生まれたとでもいうような、時代性を反映する楽曲だったと思います。ゆえに、文字通りの「2020年の楽曲」として強く推したい1曲ですね。

ネムルトビラ/熊田茜音

作詞:畑 亜貴
作曲:矢吹香那
編曲:前口ワタル



 Lantisパワープッシュの新人声優アーティスト、熊田茜音さんの5ヶ月連続配信リリース曲の一つ。「自分の弱さ」というネガティヴな感情をテーマにしたミドルバラードは、多くの人の共感を呼ぶのではないでしょうか。
 少ない音数から入ってサビ〜2コーラス目と進むにつれてトラックが増えていく作りは編曲者である前口さんお得意のスタイルという印象。さらに個々のサウンドも非常に特徴的で、曲全体の下地として刻々と流れ続ける時計のような音を筆頭に、細かく刻まれた音がいくつも重なり合っているのが耳に残ります。全体的に練り込まれたアレンジがとても魅力的な楽曲ですね。

RUN/Sexy Zone

作詞・作曲・編曲:渡辺拓也
ストリングスアレンジ:渡辺拓也 / 真部裕


 上半期の10選で同じくセクゾの『タイムトラベル』を選曲しましたが、今回はレーベルを移籍してのリリース第1弾となったこちらを選曲。デビュー10周年を見据えた彼らにとっての新たな「代表曲」になる強さを持った楽曲だと思います。新規どころか未だにセクゾ担を名乗れるかも微妙な立場でこんなことを言ってしまうのも恐縮なんですが、これまでの停滞を打破するんだ、という強い意志が感じられますね。「僕らはまだ始まったばかりさ」というフレーズも印象的。
 詞曲編を担当するのはアニソン・声優ソングのフィールドでも活躍される渡辺拓也さん。拓也さんらしい疾走感あふれる直球のバンドサウンドなので、ジャニーズ楽曲のファンに限らずとも気に入っていただけるのではないかと思います。個人的にも好きな作家さんですので、これからも定期的に提供してくれたら嬉しいな、という期待もありますね。

 惜しむらくはこの曲、リリース当時はメンバーの(松島)聡ちゃんが病気療養をしていたため4人での楽曲となっています。その後聡ちゃんが復帰し、ライブや歌番組では5人でのパフォーマンスをしていたのでアルバムでは5人版が出るんじゃないか!?と期待していたら、今度はマリウス(葉)が体調不良で活動休止に入ってしまうという……。体調に起因する休止については気軽に帰ってきてくれとも言えない(実際、休止期間中の聡ちゃんに対しては「帰ってきてほしいけど、簡単に帰ってきてくれとは言えなかった」というようなメンバーの談もあり)のですが、それでもやっぱりファンとしては、いつの日かまた5人のRUNが聞けたらとても嬉しいなとも思います。この辺りは若干アンビバレンツなところですが……何はともあれ、まずはマリウスが元気になってくれることが第一ですね。そしてSexy Zoneのメンバー5人とSexy Zoneというユニットがみんな幸せになることを願ってます、ということで!

Cosmic CoaSTAR/Happy Around!

作詞:高瀬愛虹
作曲:星 銀乃丈
編曲:星 銀乃丈、yuigot


 
 おなじみブシロードの新規コンテンツ『D4DJ』より、主人公ユニットHappy Around!の楽曲。発売当時は特に認識していなかったのですが、12月13日に開催・無料配信(!)されていた単独ライブ『Happy Around! 1st LIVE みんなにハピあれ♪』にて披露された際にビビッと来て、そのまま流れるように10選に入り込んできた1曲です。
 まずもって「宇宙」「列車」「音楽」という題材の時点でどこか物語が感じられて非常に魅力的なのですが、それらを詞・曲の両面で見事表現しているのが素晴らしい。イントロに差し込まれる発車ベルのようなサウンドが実に洒落ていてお気に入りです。それ以外にもベースの響きやクラブミュージックらしい?スクラッチなど、全体的なサウンド感がとても好みの楽曲でした。

それでもともに歩いていく/ハンバート ハンバート

作詞・作曲・編曲:佐藤良成



 上半期10選にて選曲した、アニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive』のエンディングテーマ……の、セルフカバー曲です。今回は何故こちらにしたのか?と聞かれれば「サブスクにあって勧めやすいから」というのが大きいわけですが(笑)。
ハンバート ハンバート自体は男女デュオのユニットですので、そのハーモニーは原曲ともまた違った魅力となっているように思います。
 フォークというジャンルを意識して聴いたことはこれまであまりなかったのですが、この曲をきっかけに(それこそサブスクのおすすめプレイリストレベルではありますが)他のハンバート ハンバート曲を聴いたりもしてみました。良い意味で引っかかりがないというか、ツルッと聴き続けられるような、それでいて気持ちも暖かくなるような……そんな魅力のあるジャンルだなと思いますね。そうした新しいジャンルの入り口になったということもあり、今年の10選として選曲しています。

水着とスイカRun Girls, Run!

作詞:只野菜摘
作曲・編曲:石濱 翔 (MONACA)



 デビューシングル収録の『サクラジェラート』(春)を皮切りに、『秋いろツイード』(秋)→『スノウ・グライダー』(冬)と続いてきたRun Girls, Run!の「四季曲」。今年リリースされた1stアルバムに収録された最終章・夏の楽曲がこの『水着とスイカ』です。
 シリーズの流れとしてクラブ的なサウンドを継承しつつ、激しさというよりはじっくりと聴かせるような落ち着いた雰囲気が魅力の楽曲。シングル曲の数が多かったためベストアルバム的な側面も感じられたRGR1stALですが、この曲の存在によってオリジナルアルバムとしての魅力もグッと増しているように感じました。ボーカルワークについても、ポエトリーリーディング的な「語り」の混ぜ方が強く印象に残ります。歌詞も含めて、大人へと変わっていくタイミングの微妙な「少女性」を表現した名曲でした。
 また、四季曲集大成という視点で見るとこれまでの楽曲への割と直接的なセルフオマージュもありますので、気に入った方にはぜひ4曲続けて聴いていただきたいですね(↓)。


ルンに花咲く恋もある/ワルキューレ

作詞:西 直紀
作曲・編曲:コモリタミノル



 デビューシングル収録のテレビシリーズED曲、『ルンがピカッと光ったら』の続編とも言える楽曲。作詞、作編曲の布陣も同じく西直紀さんとコモリタミノルさんのタッグで、非常にハッピーな雰囲気を持ったファンクなアイドルソングに仕上がっています。上半期10選記事でも書きましたが、適度に長さを持たせた譜割りで独特の浮遊感を感じさせるサビのメロディがとてもお気に入り。
 上半期に選んだ、選ばなかったというのは特に意識せず10選を決め直したつもりなのですが、不思議と?上半期選出楽曲でそのまま残ったのはごくわずか……というか、この曲のみになりました。逆に言えば、この曲については5月末のリリース以来、熱量を落とすことなく定期的に聴き続けられたのだなと思いますね(もちろん上半期選曲の残りも変わらず好きですよ!)。ちなみにリリース当初はアニュータ独占配信だったのですが、10月よりワルキューレを含むマクロスシリーズ楽曲のサブスクリプション配信がスタートしたため、現在は各サービスにて聴くことができます。よりアクセスしやすくなったと思いますので、お使いのサービスでぜひ。

総括

 以上、2020年の楽曲10選でした。今年からはアニソン縛りを除いての選曲としたのですが、なんだかんだでアニソン・声優ソングの方に寄ってしまうな~とは思いましたね。もちろんこれら10曲まで絞るのもかなり悩みましたし、その分自信をもってお勧めできる楽曲群であることは間違いないのですが。やはり年間を通して印象に残るレベルとなると、好きなジャンルというのはそう簡単には変わらないのだなあ、という気もしております。この辺は良くも悪くもですけどね。
 とはいえ、サブスク全盛とあって知らない楽曲にも簡単にアクセスできる時代です。それこそ他の方のレコメンドなどからもいろんなジャンルを聴いていけたらいいなと思いますので、特にSpotifyプレイリストに関してはタグ漁ってホイホイフォローしてみようかなと。

 それではまた、何かの記事でお会いできましたら。お読みいただきありがとうございました。