しちさん21 (hatena)

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【映画感想】『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』



 スーパー戦隊シリーズより、『魔進戦隊キラメイジャー』を筆頭に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』それぞれの劇場作品を併映した3本立て映画。この形式に落ち着いたのは昨今のコロナ禍の影響も多大にあるでしょうし、決してベストとまでは言えない気持ちもありますが、そんな状況の中で最大限のものを見せてくれたなという印象が残る映画でした。

それでは以下、作品ごとの感想です。

『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』

脚本:荒川稔久、監督:山口恭平

 延期になっていたいわゆる「夏映画」がこのタイミングで公開。当初の同時上映予定だった『仮面ライダーゼロワン』の劇場版は本編終了後の公開となったことを受けてシナリオにも調整を入れ撮影に入ったようですが、こちらはインタビューによると昨年夏ごろに既に撮影まで終了していたとのこと。なので、本当に例年通りの夏映画がそのままというような印象でしたね。杉田さんがフリーダムに演じるオラディン王や博多南さんのPPAPのような「中の人ネタ」を交える遊び心もありつつ、「煌めき、ひらめき、想像力」といった作品のテーマを抽出してギュッと詰め込んだシナリオは流石の一言です。
 例年と異なる点としてはスーパー戦隊単独での公開となったためか尺が若干長め(39分)になっていることと、目立った販促アイテムがなかったことでしょうか?察するに、劇場アイテム枠としてザビューンを用意していたが公開時期が未定になったことで劇場版での販促はやめて本編に組み込み、映画は映画でシナリオの流れを大きく変えずに撮影しておいた……という感じなのかなと。このあたりは推測にしかならないですが、そんな風に考えるとしっくりくるようなシーンもあり、それはそれで「名残」みたいなものが感じられて楽しかったですね(製作側は苦労したことでしょうが……)。

 あとはやはり映画というだけあり、気合の入った画作りになっていたのが好印象。伝統の東映マークから直結する浜辺のシーン、基地外観やロボ戦のナイターシーンなどなど、「TVシリーズとは違う映像を作る」という意図をビシビシと感じられたのが素晴らしいなと思います。映像周りでは山口監督の代名詞と言えるナパームも大活躍でしたが、それに加えて派手なアメフラシも印象に残りました。『平成ジェネレーションズFOREVER』でも印象的な雨のシーンがありましたが、お好きなんでしょうか?ものすごい水(雨)とものすごい炎(爆発)が共存する画面には謎の迫力がありましたね(笑)。キャリアとしては仮面ライダー畑の監督ですが、個人的にはこのままスーパー戦隊に残ってほしいな、という思いも改めて感じる作品でした。

『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』

脚本:丸山真哉、監督:坂本浩一

 『リュウソウジャー』TVシリーズ32話と33話の間に当たるエピソード。リュウソウジャーは個人的にここ数作の中でも思い入れの強いシリーズということもあり、例年通りの『VS』で見たかった気持ちは強いのですが……それでもこうして新作を制作してくれたことは嬉しいですね。作品としても、決して多くはないであろうリソースをうまくやりくりして非常に満足いくものを作ってくれたな、と感じました。
 見る前はせっかくの新作なのに本編中時系列か……という思いも少なからずあったのですが、15分という尺を考えると良い選択だったな、と。短い時間ながら、楽しく悪事を働くワイズルー様&クレオンくん、リュウソウ族のちょっとズレた感覚、カナロの婚活など、「あの頃のリュウソウジャー」が詰まっていて懐かしくなりました。ナダ編とくればいくらでもウェットな雰囲気にはできたと思うのですが、それだけでない、どこかズレててちょっと楽しいリュウソウジャーの魅力もしっかり出ていたのはとても嬉しかったですね。
 その一方で、「ナダを含めた7人のリュウソウジャー」というのはTVシリーズでは明確に描かれることはなかった要素ですから、こうして追加エピソードとして描かれたことでTVシリーズの物語もさらに深みが増したと思います。逆に、33話を先に見ていることで今作のラストにはもの悲しさも感じられますし、単に整合性が取れているというレベルを超え、本編の穴埋めエピソードとして非常に出来の良い作品になっていたなと。

 残念だったことを敢えて挙げるならばコウ以外の変身がなかったこととケボーンダンスがなかったことなのですが、前者に関しては先に述べたような「リソースのやりくりの上手さ」という視点で見れば個人的には高評価。制作側の詳しい事情はもちろん分かりませんが、少なくとも新規怪人スーツを作る予算はないでしょうし、ヒーロー要素・アクション要素をどこまで入れるかというのは悩みどころだったのではないかと思います。33話の「リュウソウガイソー」のくだりを踏まえると、このタイミングでナダが変身するのもちょっと気になりますしね。そのあたりを考慮すると、坂本組で生身アクションを売りにするというのは選択肢として十分ありだったのではないでしょうか。脚本上でも、マイナソーの能力で変身能力を封じることで理由付けしていたのは上手かったなと。宿主の「変われない」というマイナスの感情がこの能力につながるのも、TVシリーズのマイナソーの流れにしっかり則っていて懐かしかったですね。
 とはいえ、どうしても消化不良感が残ってしまうのもまた事実。リュウソウジャーに関しては今回の映画やFLTの漫画化など可能な限りのアフターフォローをしてくれているように思いますが、贅沢を言えばやっぱり『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』はやって欲しいですし、そこでTVキャスト7人での「正義に仕える7本の剣」名乗りやケボーンダンスも見られたらいいな、と……これはさらなる希望として、ひとまずはここに書き残しておきたいですね。

『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会!!』

脚本:香村純子、監督:中澤祥次郎

 昨年の『キラメイジャー エピソードZERO』に続き、今年も新戦隊がTVに先駆けて劇場作品でお披露目になりました。キラメイジャーは充瑠以外の4人のオリジンであり時系列的にも本編1話に直結するエピソードでしたが、今作はもっとシンプルに「顔見せ」といった印象でしたね。序盤のアクションシーンなんかはそれこそゴセイジャーキュウレンジャーの先行登場を彷彿とさせました。トピックとしては歴代ヴィランからバスコ&サリー、九衛門、バングレイ、ザミーゴが当時のキャストで登場というのもありますが、こちらもまたシナリオ的には顔見せくらいだったかな……?とはいえ出演はやはり嬉しいですし、再生怪人的な扱いに対して一定のフォローも入っていたのであまりファン側の感情としてめんどくさいことにならなさそうなのは流石にスーパー戦隊だな、と思いました(笑)。
 人間1:キカイノイド4のバランスは正直まだ慣れないところもある(特に、変身後スーツデザインはコンセプトからしてこれまでのシリーズと全く別になるので)のですが、この辺りは1年見ていくうちに馴染むんでしょうね。パンフの中澤監督のインタビューでは「庶民感覚」「ロボットコメディ」といったキーワードが出てきましたので、そんな路線で進んでくれると嬉しいなと思います。
 あと全然本筋と関係ないところなんですが、階段の下で占い師?をやってるマジーヌが直前のワイズルー様と丸かぶりしててだいぶ笑いました。こんなところでも笑いを生み出すワイズルー様、やはり最高オブ最高!ってことで(笑)。