しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【映画感想】『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』



監督:坂本浩一
脚本:下 亜友美


 (映画というかVシネマの先行上映ですが)スーパー戦隊VSシリーズ最新作。まずは社会情勢も厳しい中、こうしてVSシリーズの歴史が続いたことを喜びたいところ。ただでさえ一時期に比べてシリーズの「恒例」感は減っているので……。スーパー戦隊も再び(?)変革の時期に突入していますが、このシリーズは伝統として是非とも続けていってほしいなと思います。

(以下、感想のためネタバレ注意)

 まず、路線的にはかなりエンターテインメントに寄せている印象。「映画の世界」というネタを使い、Vシネ恒例のチーム分け・コスプレ(?)展開が中心の作品でした。ベタな構成ではあるのですが、同色戦士を中心にキャラクター重視で組んだペア分けはどの組み合わせも非常に相性が良く、その掛け合いだけでも一定の満足度があります。個人的にはキラメイジャー開始当初から期待していたトワ瀬奈ペアが特にかわいくて好きですね。宝路とカナロを「妹を溺愛する兄」という共通点でつなぐのは割と盲点だったので上手いなと思ったのですが、全体的に「初期5人+5人」と「追加戦士ペア」で別れてしまい、クライマックス付近でカナロがリュウソウチームにあまり混じらなかったのは惜しいところ。このあたりは両戦隊における追加戦士と初期メンバーのバランスの違いですかね。あとはロボの構成の関係もあると思うのですが、やはりモサレックスにも想いを届けて欲しかった……!

 ちなみにカナロと言えば欠かせない婚活ですが、今回はなんともまあ、変化球でしたね(笑)。「普通に瀬奈や小夜じゃ面白くないよね」とは丸山Pの発案らしいですが、確かに前回(リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー)が直球だったので上手く差別化できていたなと。マブシーナに向かっていって宝路に止められるラストも、普段カナロ自身がメルトくんとオトちゃんの関係にやきもきしているのと対比のようになっていて面白かったです。本編最終回でのアスナへの婚活フラグみたいなものが本当にまっっっっっっったく触れられなかったのはいっそ清々しい!
 また、何といっても坂本浩一監督作品ですから、コスプレパートからクライマックスまで素面アクションがてんこ盛り。キャストインタビューでも頻出していましたが、それ(素面アクション)の有無がキラメイジャーとリュウソウジャーの顕著な違いでもあったのかもしれないですね。同時に、見る人によって評価が分かれそうなところでもあるな……というのは、坂本組があまり馴染まない側である自分の意見としてですが(笑)。

 このような構成の中で映画の軸を通すドラマとなったのは、充瑠のスランプをめぐるくだりでした。
 スランプを抜け出すとき、「考えるな!」というコウの言葉を受けて響き渡る「ケボーン!」の音声がすごく好きです。どこか破天荒とすら言えるリュウソウジャーの作風を体現した言葉であり、それがそのまま自由な発想=「ひらめキーング!」というキラメイジャーの大切な要素に重なるのがとても綺麗だと感じます。
 加えて忘れてはならないのが、悩める充瑠にコウがした「友人」の話。最初ナダかな?と思ったのですが、なるほど、ういちゃんですね。彼女と充瑠を重ねるのは意外でしたが、考えてみれば「戦う騎士」であるリュウソウジャーにとって「現代人の友人」という立場にいたのがういちゃんですから、「それぞれのやりたいことで輝くヒーロー」であるキラメイジャーとは通じるものがあるのだなあ、と。"絵師"と"動画配信者"というのも、現代的な「やりたいことの表現者」という意味では近いところがあるかもしれません。(ただ、一つ気になるのはういちゃんの話をするときにやや過去形な語り口になっていたような……記憶違いだったら申し訳ないのですが。)

 そして最後になりますが、主題歌『キラフルパーティー de キラケボーン』が本当に素晴らしい!楽曲の良さももちろんなのですが、私がリュウソウジャーという作品を好きになった大きな理由の一つがケボーンダンスの存在なので、EDダンスにケボーンダンス・キラメイダンス両方の振りが入っているのがとても嬉しいです。まさに「お祭り映画」の締めくくりに相応しい、素晴らしいエンディングでした。