しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【仮面ライダーセイバー】フィギュア王No.284 (2021年9月27日発売号) 雑感




 本日発売のフィギュア王。『仮面ライダーセイバー』TVシリーズ完結のタイミングに合わせ、関連玩具カタログと企画チームによる振り返りコメントを交えた特集「聖剣ライダー伝説」が掲載されています。とてもディープな内容だったので、こちらの特集を読んでの感想。

 玩具雑誌の総括記事とあって企画初期段階からの変遷が詳細に語られているので、文字通りの永久保存版、セイバーファン必読といった読み応えでした。「剣」がモチーフに決まる前のアイディアとして語られた「お弁当ライダー」(初耳)はなかなか突拍子もないアイディアだなとも思いますが、「母の愛情でパワーアップ」は高橋Pらしい印象もありましたね。実現したらどうなっていたことだろう……(笑)
 玩具やキャラクターデザインまわりの話も興味深いですが、個人的な見方としてやはり気になるのは文芸面について。感染症流行の拡大による設定変更があったことは発表当初から言われていましたが、こちらについても(初めて聞く情報を含めて)とても具体的に語られていました。曰く、「1・2話のシナリオが上がっていざ印刷に回そうとしていた」タイミングで基本設定から変えていくことを余儀なくされたようなので、現場の混乱は想像に難くないですね……改めて、無事にスケジュール通りに1年間放送しきったことに視聴者として感謝したいです。
 設定変更前の構想についても詳細に触れられていました。中でも印象的だったのは「飛羽真は幼いころに異世界に消えた友達を取り戻すため、本を読んで知識をつけたり剣術を学ぶなど準備をしてきた男」「各地の剣士たちと剣を交え、絆を深めていくロードムービー的構成」というあたり。こうした要素がコロナ禍に伴う設定変更で玉突き的に立ち消えとなった影響は大きかったでしょうね……。特に、後者の構成が実現できていれば1クール目のごちゃごちゃっとした印象をかなり払拭できただろうと思います(ロードムービーは例年通りの条件でも厳しい気はしますが、組織を先に出すのでなくエピソードごとに新しい剣士が出るだけならだいぶわかりやすかったはず)。飛羽真の初期設定も歴代主人公だと天道に近い印象なので、今とはだいぶイメージが異なります。石森プロの山辺さんも文中「最大の反省点」として挙げられていましたが、「本を読み、知識を学んでいるから強い主人公」という見せ方も薄れてしまったのは非常にもったいないと感じました。「勉強すること」って(死ぬほどめんどくさいですけど)とても有意義なことなので、そこを魅力的に描けたら子供番組としては素晴らしいんじゃないかと思うんですよね。なので、そういう意味での「本の仮面ライダー」が初期設定ならもっと描けたのかな、というのはたらればですが思ってしまいます。もちろん、今の飛羽真は今の飛羽真で好きなのでこれは良し悪しですけどね。

 総括して、番組制作・玩具制作ともに企画チームが揃って反省しきりだな……というのは読んでの正直な感想です。それはもちろん新型感染症の大流行という歴史的な事態にぶつかってしまったことが大きいのですが、全てがその影響というわけでもなく。例えば高橋Pは反省点として「年内に登場するキャラが多すぎたことで、想定よりもさらに忙しない展開になってしまった」といったことを挙げられていましたが、この辺りはコロナ禍前に決まったスケジュールのようなんですよね。先に述べたように設定変更の煽りを受けてより難しくなった部分もあるとは思うのですが……。もともと難しいことをやろうとしていたところに、コロナ禍の直撃で(特に序盤は)しっちゃかめっちゃかになってしまったのかな、と。そういった状況がよく伝わってきて、読み物としては非常に満足度の高い特集でした。
 とはいえ、当然ながら完全に後ろ向きに終わったわけでもなく。こうした厳しい状況の中でも無事に放送を終えられたことへの喜びと感謝も確かに綴られていたのはホッとしますね。世の中的にもまだまだ先の見えない情勢が続きますが、いちファンとして今後のシリーズや同スタッフの再チャレンジなどにこの経験がつながればいいなと願うばかりです。