しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【劇場版ミルキィホームズ感想】「探偵歌劇」としての「逆襲のミルキィホームズ」

去る2月27日、「ミルキィホームズ」シリーズ初となる劇場版、『劇場版 探偵オペラ ミルキィホームズ逆襲のミルキィホームズ〜』がめでたく公開を迎えました。私も初日にまず2回見ましたが、第1期・第2幕の良いところを凝縮して発展させ、さらにその他のシリーズのエッセンスを少しずつ盛り込んだような内容で、まだまだ見たくなるほどに大満足な映画でした。

せっかくなのでブログに感想を書こうとちまちま書き進めていたのですが、基本言語化が下手なのにも関わらずあれもこれもと書きたくなってしまうせいでいっこうに公開できる気配がない。そこで、肩の力を抜きつつ私なりにオリジナリティを持って書ける感想は何か無いかと考え、ミルキィホームズはアニメもゲームも基本全部好き!だけどTDが1番好き!」という割と少数派であろう立場から、劇場版におけるTD要素について軽く感想を述べてみたいなと思った次第であります。


劇場版のTD要素はざっくりと2つ。 

まずひとつは天城茉莉音ちゃんの登場(?)です。

そもそも茉莉音ちゃんを始めとするTDメインキャラは基本的に「アイドル」であり、トイズを持った「探偵」と「怪盗」が競い合う大探偵時代を舞台としたミルキィホームズの世界観の中ではかなり異質な存在です。茉莉音はTDにおいては「依頼人」という立場をとることで大探偵時代に存在していましたが、それはつまり依頼が終わればミルキィホームズの世界とは関わりが薄くなるということでもあります。そのままなら後のシリーズにおいてはあまり出てこない、さらに言ってしまえば出すべきでないキャラなわけです。その問題に対してひとつの解決策を打ち出したのが、TD最終話「The detective of the Opera」。茉莉音によって依頼された「奇跡の歌」の奪還は前回までに果たされ、エピローグ的な最終回となったこの話はアイドルとして再び活躍する茉莉音と探偵として様々な依頼をこなすミルキィホームズの両者を描き、茉莉音を「仕事が終わればはいさよなら」ではない、ミルキィホームズ立場は違えど確かな絆で結ばれた「友達」とする素晴らしい最終回でした。

話は戻って、劇場版。オールスタームービーと言われた時もあまり無理に期待をするのはよそうと考えていました。だって彼女は探偵ではないのだから。明確な出番を求めてはいけない。でも全くでないのも悲しい。せめて何か、彼女が自分のステージで元気にやってることがわかる要素があると嬉しい、例えばポスターとか……。そんな気持ちで見に行った私の目に開始早々飛び込んできたのが、背景に映る「茉莉音 全国ツアー」のポスター。思わず小さくガッツポーズでした。茉莉音ちゃんは今も頑張ってる。そのことがわかっただけでも個人的にはある程度満足でしたね。さらに言えばEDの新聞記事では「マーロ国」(1期6話のクラリス王女の国)でもライブをすることが書かれていて、1期2幕と同じあの世界に存在しているんだということが感じられたのも嬉しかったです。作画も2幕までのあの丸っこい感じになってましたし。


そしてもうひとつのTD要素。クライマックスのあるカットで歴代シリーズのキャラが映るところがあるのですが、TDから法条美樹ちゃん、マネージャーさんが登場しています(※1)。たった1カットではありますが、無視できないポイントがひとつありました。それは美樹ちゃんの衣装です。彼女は、かつて所属していたアイドルグループBKT10000の衣装を着ていました。

先ほどTDの最終回が素晴らしかったと書きましたが、それはミルキィホームズと怪盗帝国、ミルキィホームズと茉莉音の関係に注目した場合の話であり、天城茉莉音を主人公とした『探偵歌劇ミルキィホームズTD』という作品としては大きな不満がひとつあります。美樹ちゃんの扱いです。

法条美樹という女の子は、茉莉音と並ぶTDのもう1人の主人公でありつつ、歌怪盗としていわゆるラスボス的な立場にもいる存在でした。というか、だと思ってました。しかし、土壇場で美樹に取り憑いていたエレメント・アモーレの存在が明かされ、彼女が歌怪盗事件の主犯格であったことがわかります。もちろん美樹ちゃんもただ操られていただけではないですし、その後の"もう茉莉音だけのものじゃない"と2人で歌い上げる奇跡の歌はそれはもう美しいものだったのですが、この時点でストーリーの中心は「茉莉音と美樹」から「茉莉音と母」、親子の話へとシフトしてしまった感がありました。

そして最終話では冒頭で美樹が休業することが示され、その後の出番はラストでどこか南の島のようなところで穏やかな表情で佇むカットがあるだけ、まさかのセリフなしでした。実質主人公の茉莉音と対になる、言うなれば実質裏主人公であるはずの美樹ちゃんが最終回にこの出番の少なさなのはやはり悲しいなと思ってしまうわけです。お話として考えれば歌怪盗として数々のアイドルから歌を奪った罪がある(※2)以上休業も止むなしなんですが、出番の少なさに対する不満もあり美樹ちゃんを不憫に思う気持ちがちょっぴり残ってしまっていました。

しかし。しかしですよ。今回の美樹ちゃんはBKTの衣装を着て、マネージャーさんと一緒にヨコハマにいたんです。つまり、彼女はアイドルに復帰したのです。特に深い意味はないのかもしれません。ただ基本の衣装設定がそれだっただけなのかもしれません。でも、それでも、私は美樹ちゃんが再びアイドルとして輝けていると示してくれたことが嬉しくて仕方ないのです。彼女もまた、敗者復活を果たした1人なのです。


以上が今回の劇場版でのTD要素のすべて、だと思います。けして多くはありませんが、2人のアイドルが今でも元気にしていることがわかって私は感動しました。ありがとう、逆襲のミルキィホームズ

「TDしか見てないから劇場版はどうしよう……」と考えているあなた、まずは1期と2幕を見てみてください。面白かったなら、絶対に損はしません。劇場版を見に行ってください。そんな時間はないという方やあんまりだったかな……という方も、茉莉音ちゃんと美樹ちゃんの姿を是非その目でご覧になるためにも劇場版を見に行っていただければ幸いです。

(※1)プロデューサーさんは残念ながらいない……?見落としてるだけかもしれないけど
(※2)茉莉音ちゃんの事件以外は『トイズドライブ』のほうの歌怪盗である怪盗ロストソングになすりつけられたりしないかなと思いましたが彼女は大型アップデートという名の歴史改変ビームによってレコードや楽譜を直接盗む現実的な怪盗となったので無理そうです