しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【映画感想】『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』

 毎年恒例のプリキュア秋映画、今年は15周年を記念して例年とは趣向を変え、現行作HUGっと!プリキュアと初代シリーズふたりはプリキュアを軸に歴代TVシリーズのメインプリキュア55名が勢ぞろいの豪華オールスター作品に。監督は『プリキュア ドリームスターズ!』の宮本浩史、脚本は『Go! プリンセスプリキュア』『キラキラ☆プリキュアアラモード』に参加の香村純子

[予告]

[感想]
 いきなり変な話で申し訳ないんですけど、いわゆる競合作品に位置付けられる某シリーズが好きなこともあるのか、プリキュアさんって私の中では「他所様」な感じが少なからずあるんですよ。もちろんそれは自分にとってのなんとなくの距離感の話であって対立煽りのつもりは全くないですし、基本的には楽しく見てはいるんですが。ただ、性格的なものもあってやっぱり思い入れという部分ではファンの方々には及ばないだろう、と一歩引いてしまうところがあって。単純な知識で言っても最後までちゃんと見たシリーズはリアルタイムで見たスマイル・ドキドキとそのくらいの時期(つまり数年前)に一気に見た『プリキュア5』シリーズくらいで、他の作品は飛び飛びだったり途中までだったりなんですよね(いちおうHUGに関しては公開時の最新話まで見られていますが)。なので、こうしたオールスター作品、それも自分が見てない初代をフィーチャーした作品だと十二分に楽しむっていうのはちょっと難しいかなあと思っていました。

 ですが、結果から言えば、少なくとも自分の感覚としては満足いくレベルでしっかりと楽しむことができたと思います。本作の良さはやはり、クライマックスのミラクルライトのシーンにおける「あなたの好きなプリキュアは誰?」という問いかけに集約されるのではないでしょうか。55人全員と向き合ってきたわけではないけれど、「好きなプリキュア」ってのも当然いるわけで。「あなたの好きなプリキュア、ひとりじゃなくてもいい。その子のカッコよかったところ、かわいかったところを思い出して」と言われて、ソードの歌いながらの変身やらピースの父の日回やら、自分の中にも染み付いている「プリキュアの好きなシーン」がフラッシュバックしてきました。自分なんかよりもっと度合いの強い「好き」を持ってる方は山ほどいると思いますし、シリーズ全体の歴史から見ればほんのわずかな思い出かもしれません。けれど、そんな自分の「好き」をも肯定してもらえたような気がして、不意に泣きそうになってしまいましたね。

 私なんかは色々とこじらせたオタクなのでこんな感想になってしまいますけど、15年経てば子供と一緒に観にきた親御さんが幼少期に見ていた作品に再会する可能性だってゼロじゃないですし、自分の好きだった作品が出るからまた見てみようと思った人もいるかもしれません。逆に、HUGしか見てなくて過去作のことは全然知らないという人も当然いると思います。観客が100人いれば100通りの思い入れがあるわけで、そうした気持ちを直接(いわゆる「第四の壁」を超えて)揺さぶって、「自分の想い出がプリキュアの力になる」という感覚を作り上げたのは非常に上手かったと思います。

 さて、いちばん語りたかった部分についてはこんなところなんですが、せっかくなので映画全体についても少し。
 まずは宮本監督ということで、CGを取り入れた画面作りについて。『レフィ』『ドリームスターズ』に続いてシリーズ3回目となりますが、やはり従来とは違う方法論である以上メリットデメリットの両面があるかなと思います。私自身は技術的な部分はサッパリなのでなんとなくの感覚で話してしまう形になってしまうのですが、CGに合わせた結果か、若干茶色味のかかった主線のキャラデザは単純にあまり好みではないかも。一方で、後半ミデンの作った空間に舞台が移ってからの空気感はCGならではという感じですごく良かったです。作画に合わせる形でCGを使う場合、やはり写実的/現実的な風景よりも幻想的な空間の方が映えるんですかね。……と思ったけど、冒頭の横浜は悪くなかったな。うーん、まとまらなくなってきたので無理くりまとめますが、CG表現を取り入れることについては大賛成なので、作画とのすり合わせ等を続けるならさらなる進化を模索していただけると嬉しいかなと思います。もちろんこんなところで言われるまでもないことでしょうけどね。

 続いてシナリオ面。けっこう言われているように、HUGのテーマのひとつである「子育て」についてはTVシリーズ以上に打ち出されていたような気がします。というか、もっと具体的には「赤ん坊をあやす親の苦労」かな?こうした描写はあくまで子育ての一面に過ぎないとも思いますし、実際今回がそうだったようにしっかりと描くと話が重たくなる要因でもあります。故にTVで強く印象付ける描き方は難しいかなとも思いますが、やはり大事な側面だとも思うので、映画という場で改めて取り組むことができたのはある種の相乗効果と言えるのではないかと。この辺は別班制作のメリットかもしれませんね。
 そして、敵キャラクターとなるミデン。予告等では「プリキュアの力を奪う強敵!」という点が押し出されていましたが、結果として相手に寄り添う形の解決となったのはエールらしい、HUGらしい展開だったかなと思います。また、「思い出」という作品テーマが選択されたのは(最初に述べたような)想定される客層からかなと思いますが、それを受けて「カメラ」というモチーフが採用されたのは個人的にも好みな流れ。今後TVの方でもチラリと「ミデン」を使っているようなシーンが見られると嬉しいですね。それから、敵のモチーフといえば嬉しかったのはハートの「愛を知らない悲しいカメラさん!」プリキュアでいちばん好きな決め台詞なので、数年越しに聞くことができて感無量でした。

 歴代キュアの話題が出たところで、最後にオールスター要素についても。先程からチラホラと言っていますが、自分の思い出のプリキュアとしてはやはりドキドキ!プリキュアを強く思い出しました。あの独特のパワフルさ、好きなんだよなあ……
 映画全編に目を向けるとあくまでメインはHUGと初代ということで、それ以外の歴代プリキュアについては控えめな出番だった気もしますが、やはりキャスト的にはいるといないでは大違いだなとも思いました。それこそ直前のTV(36・37話)で行われたシリーズ共演回は映画以上に複数シリーズの共演を描いていた反面、キャストの都合による「不自然な無言」も多く見受けられたので、そういったカットがないのは55人全員を揃えただけのことはあったと思います……そりゃあ欲を言えばもっと喋って欲しかったですけどね。大久保瑠美さん好きなのでミューズとか楽しみにしてたけど、必殺技叫んだくらいじゃない?
 ただ、近作ということもあってか『アラモード』『魔法つかい』あたりの印象は比較的強かった気がします。戦闘シーンも尺長めだったかな?相変わらずマイペースなゆかりさんと、僕らのピンクトルマリン先輩はある種の見せ場。アラモード組に関してはラストシーンでシレッとキラパティ開店していたのにクスリと笑ってしまいました。ああいう小ネタは良いものですね。

 というわけで、あまりまとまりきってない感じになりましたが、プリキュア映画感想でした。繰り返しになりますが、「観客の想い出」を作品に取り込んだ作りが本当に巧みで、少しでもプリキュアに触れていた方であれば感じるもののある作品になっていたと思います。「子供といっしょになんとなく」とか、「戦隊やライダーのついでに」とか、「昔ちょっとだけ」とか、そんな感じで見てた人にも是非見ていただきたいですね。