しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

『Dancing☆StarプリキュアThe Stage』( #ぼくプリ )を見た

 いよいよ開幕した舞台プリキュア。しばらくブログも放置気味だったので、リハビリを兼ねて感想を書いていく。ネタバレは控えめにするけど、ゼロではないのでご注意を。

ダイジェスト映像

シナリオ・キャラについて

 前半はプリキュアのフォーマットをはっきりとなぞって「これは『プリキュア』なんだ」と感じさせ、後半に行くにつれて2.5次元舞台的な独自性も出てくる……という構成だったように思う。冒頭のキュアトップ変身は実に「第1話」だったし、キュアロックの変身エピソードはしっかりと「第2話」だった。そこから先は「TVシリーズで言えば第◯話」みたいな印象は薄くなってきたんだけど、そこはやっぱり1本の舞台作品なので、長編話にシフトした感じ。

 キャラクターに対する尺配分は上手く、プリキュア5人はもちろん妖精のパドドゥ・顧問の伊藤先生・ゲストエピソードを担当する蛍くんと充くんまで全員に魅力を感じられるだけのドラマが作れていたのが良かった。お気に入りのキャラはキュアロック/夏目颯斗くん。自分のやりたいダンスに思い悩むドラマは共感もあったし、冷静かつ常識のあるツッコミも好き。歴代キャラでいうと六花に近い印象かもしれない。ザ・主人公ピンクキュアな明るさを持ったキュアトップ/星河楽もかなり好き。ドキプリ繋がりで言うなら、こちらもマナさんに負けず劣らずのカリスマ性があった。それから、意外性No.1だったのはキュアカグラ/天弦晃雅さん。緑キュアだし、イラストは穏やかな笑みを浮かべていたしで癒しキャラかなと思ってたらめちゃめちゃワイルドな厳しい先輩だったよ……。*1

 2時間半でしっかり1エピソードまとまっているのだけど、まだ回収されていない伏線も多く、さらに最後には明確に続編を意識してそうな展開もあった。現時点で決まっていることがあるのかどうかはわからないけど、なんらか続編があれば素直に見たいな〜と思える作品だったし、さらなる盛り上がりを期待しながら楽しみに待っていたい。

『男子』のプリキュア

 発表時に一番反響が大きかったのはここだった気がするけど、蓋を開けてみればいい意味で全く気にならないポイント。「僕たちがプリキュア!」という力強い断定のキャッチコピーの時点でわりと信頼していたけれど、「男の子"なのに"プリキュア!?」みたいな視点が舞台中に一切なかったのが非常に見やすかった。主人公たちはプリキュアのことを「ヒーローみたいなもん」というふうに表現しているのだけど、ちょうど現行のTVシリーズプリキュアのことを「ヒーローガール」と定義しているおかげでその表現もより飲み込みやすくなっている気がして、シリーズとしていい連携が取れているな、とも思う。

『舞台』のプリキュア

 アニメ作品として積み上げてきたお約束のあれこれが舞台として表現されているのがやはり大きな魅力だったと思う。特筆したいのは「変身バンク」*2。シルエット映像を投影した衝立、アンサンブルキャストによるエフェクト表現、(可能な限り)敢えてステージ上でも小刻みに衣装替えをする見せ方、そしてキャスト本人によるダンスパフォーマンス……素晴らしい発想力で「変身バンク」としか言えないシーンを舞台上で再現していたと思う。関係者の口ぶりからも力を入れたポイントなのが伝わるし、見ていてもこのシーンでバッチリ心を掴まれたのでその後はより信頼しながら見ることができた。

 反面、妖精のパドドゥについては良くも悪くも舞台という媒体に合わせたキャラクターになっていたように思う。これは本当に良くも悪くもとしか言いようがないのだけど、「おもしろい(funnyな)キャラ」になってるんだよね。鷲尾プリキュアの妖精といえば男性声優の裏声がひとつの魅力だと思っていたのでパドドゥのことはだいぶ楽しみにしてたんだけど、そういう「成人男性がファンシーな妖精をやっていること」が舞台だと観客の笑い声という形で劇中世界に伝わってしまう、というのは自分でも思いもよらない発見だった。となると作品側としてもそれを取り入れる方向に進むのは必然で、ダイジェスト映像にもある「おっさん!」「おっさんて言うな!」的なやり取りはもう少し勢いを増しつつ舞台を通して3〜4回くらい繰り返され(てたと思われ)る。それはおもしろいんだけど、プリキュア的というよりかは2.5次元舞台的なユーモアに感じられて、個人的にはほんのり違和感を伴うシーンだった。逆に言うと、そのくらい細かいポイント以外はほとんど気にならなかったんだけどね。

『ダンス』のプリキュア

 事前のインタビュー記事などで鷲尾さんとほさかさんが「普通の男子高校生がダンスにかける日常の部分を大切にしたい」といったニュアンスの発言をされていた通り、ダンス部の青春は舞台においても高い比重を持っていた。日常シーンでも戦闘シーンでも差し込まれるダンスは舞台映えするし、物語的にもダンスでぶつかり合って通じ合うのが青春らしくて良かった。それと、主人公たち一人一人が得意な/好きなジャンルを持っていてそれが戦士としての特徴にもつながるっていうのがプリキュアらしさも高めていたんじゃないかな。「ロックはRockじゃなくてLock」のあたりとか、そういうモチーフに対する知識の盛り込み方、あるあるだよね。欲を言えば変身コール中にジャンル名も差し込んで欲しかったとか、音楽系でスイートと印象は被るかもとかは思ったけど、TVシリーズでダンスプリキュアをやってもこんな感じなのかなと思えたのは制作チームのリスペクトによるところだろう。

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 驚きとともに発表された『ぼくプリ』だが、個人的にはこういった番外作品的な試みは好きなのでとても楽しい作品だった。差し当たっては続編、ひいてはこうしたチャレンジ企画がこれからも成立するシリーズであって欲しいな、と思う。と言うわけで、よければまずは配信で、レッツ・ダンス・ハイ!↓

*1:演じる寺坂頼我さんはかなり天然のようで、カーテンコールでは場を和ませていたのでそのギャップに役者だなあ、と思ったりもした

*2:本来の意味合いの「バンク」とは異なるけど、便宜的にこう表現させてほしい