しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

2021年の楽曲10選

はじめに

 最初にSpotifyプレイリストとYouTubeの試聴動画再生リストを貼っておきます(YouTube Musicアートトラックの見てくれがだいぶ非公式のそれだなと感じるので一応言っておきますが、全て公式動画です)。
今聞けないという方も、よろしければフォローなりブックマークなりしておいて暇なときに流してくれたら嬉しいです。お願いします!

Spotify


YouTube


* * *

 目次を兼ねて、選曲は以下の通りです。順番はアーティスト名五十音順。
  1. 空のうた/アイダさん (CV:高橋李依)
  2. Life is サイダー/アネモネリア
  3. Canary Yellow/内田 彩
  4. O₂リンク/A応P
  5. Woooork!!/柿原徹也 with 佐伯youthK
  6. sync feat. 内村友美/坂本真綾
  7. LET'S MUSIC/Sexy Zone※配信無し
  8. おもいでしりとり/DIALOGUE+
  9. シアワセリクエスト/東山奈央
  10. 輝く永遠ヒストリー/マイキャラガールズ※配信無し

  11. 総括

空のうた/アイダさん (CV:高橋李依)

作詞・作曲:矢野顕子
編曲:増田武史



 先に謝りますと、現状「見てないアニメのキャラソン」です。なので以下の選評はインタビュー等で読んだ情報を元に書いてますが、そこはご容赦頂ければ幸いです。
 1980年放送のアニメ『とんでも戦士ムテキング』をリブートしたタツノコプロ制作のアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』。1話から竹内まりや「Plastic Love」をアレンジして使用するなど、作品全体として80'sシティポップをオマージュした方向性を目指しているアニメです。
 今回選曲したのは、高橋李依さん演じるヒロイン・アイダさんが歌うキャラクターソング。シティポップ隆盛の時代から活躍するシンガーソングライター・矢野顕子さんが作詞作曲を担当されているのもすごいことですが、個人的に注目したいのはやはりアレンジの増田武史さんですね。山下達郎竹内まりや両名の所属事務所であるスマイルカンパニーの所属作家であり、弊ブログを長く読んでくださる方にとってはクリエイターユニット・eyelisのメンバーとしてもお馴染みかと思います。アニメ『MUTEKING』には劇伴制作でも携わるなど関わりの深い増田さんですが、以前にも舞台のお仕事で竹内まりやさんの楽曲をアレンジしていた経験を買われて起用されたとのこと。さらに近年ではまりやさんご本人のアルバムにも編曲で参加されており、つまるところ竹内まりや本家のアレンジャーなのです。そんな豪華メンバーが送り出す、本気の「アニメ・シティポップ」がこの「空のうた」。今年一レベルの名曲となるのも必然だったと言えるでしょう。

Life is サイダー/アネモネリア

作詞:宮嶋淳子 (SUPA LOVE)
作曲:秋葉広大 (LIVE LAB.)
編曲:小松一也



 CloverWorks制作のオリジナルTVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』EDテーマ。歌唱は同作のメインキャスト4名(相川奏多さん、楠木ともりさん、斉藤朱夏さん、矢野妃菜喜さん)によるユニットです。
 最近はちゃんと見られるアニメの本数が減ってしまっていることもあり、直球の「アニメソング」を聴く機会も少なくなっているのですが、そんな中で今年最も「アニメ主題歌」としての魅力を感じたのがこの曲でした。ワンダーエッグは映画的というか実写的というか、とにかく「間」を活かした引き込まれる映像づくりが魅力の作品だったので、毎週のED入りで映像に対する緊張感がフッと解かれるのがとても気持ち良かったんですよね。アニメ全体はいろんな意味でヘヴィな作風でしたが、一服の清涼剤になる楽曲でした。
 また、この曲に関しては歌詞の魅力も大きいなと感じます。「思春期の少女が抱える様々な悩み」「サイダー」を掛け合わせた題材は、それこそアニメとこの楽曲の関係性を落とし込んだような魅力がありますね。「サイダー」ひとつで儚さも爽やかさも両方感じられるのがとても好きです。辛いこと、悩むこと、どうにもならないことが山のようにあるけど、それをちょっとでも分け合って笑い合うことで抱えながら生きていこう、という友情の歌にも思えますし、弾けては消えていくサイダーの泡のように全てを消してしまおう、という破滅の歌にも思えるのがおもしろいところであり恐ろしいところですが……自分としてはやっぱり、前を向いて生きていく希望の歌と捉えたいですね。

Canary Yellow/内田 彩

作詞・作曲・編曲:hisakuni



 ブログで10選を始めて以降3度目の選出となる内田彩さん。今年はTVアニメ『やくならマグカップも』のタイアップで2枚のシングルをリリースしましたが、とにかく良い。なんらかのゾーンに入っているのでは?というくらい、c/wを含めた全ての曲が高いクオリティで安定しているように感じます。それゆえに自分に課している1アーティスト1曲縛りの中で大変悩んだのですが、最終的にはやはり単曲のキャッチーさは表題曲が強いよね、ということで『やくならマグカップも 二番窯』(第2期)のEDであるこちらを選曲しました。
 作詞・作曲・編曲のhisakuniさんは『やくも』1期EDでもある前作「Pale Blue」も担当されていますが、そちらはドラマチックなメロディ展開が印象的だったのに対し、本作はリズムで魅せるダンスチューン。同じ作品のタイアップでクレジットも共通していながら、それぞれに違った魅力があるのが素敵だなと思います。一方で、歌詞に耳を傾けるとかなり直接的にリンクしているのもまた面白いところ。今回はこちらを選曲していますが、是非2曲セットで聴いてみてください。
作詞・作曲:渡辺 翔
編曲:倉内達矢



 本年3/31をもってその活動を終了したユニット・A応P。なんだかんだで10年くらいオタクをやっていると、こうしたグループの「活動終了」の報せを見る機会も増えてきます。もちろんそれは寂しいことではあるのですが、最後をどのように締めくくるかというのは一つの見せ場でもあるよな、とも思います。ましてや自分にとってA応Pは「楽曲制作チームを推しているユニット」だということもあり、活動終了発表以降は寂しさとともに「最後の曲はどうなるのか?」ということにも関心を持っていました。
 そんな期待と不安が入り混じる中で発表された最後のベストアルバム。そこに収録された新曲がこの「O₂リンク」です。デビュー曲でも作曲を担当し、今回は作詞・作曲両方で携わっている渡辺翔さん曰く「いかにも泣ける曲、みたいなのは嫌だけど、その上で泣かせられるような曲にしたかった」※1)とのことで、その狙いは見事ハマっているように感じました。好きなものがたくさんあって、その話をしている時間は夢みたいに楽しくて、これからもずっと続いていく……そういった感情が詞・曲の両方でバッチリと表現されていて、重たくはないけれどしっかりと心に残る魅力がありますね。最後を飾るに相応しいものになったと思いますし、同時にファン向けに留まらない普遍性も持っているので、ぜひとも広く聴かれて欲しい楽曲。万感の思いが感じられるファイナルライブのパフォーマンス映像も公開中です。



Woooork!!/柿原徹也 with 佐伯youthK

作詞・作曲・編曲:佐伯youthK



 年末も年末、ご本人の誕生日合わせで12/24に飛び込んできたカッキーのアルバム。多方面で活躍する佐伯youthKさんが全曲のプロデュースを手がけた作品です。全曲を通して聴くと普段の佐伯さんの提供曲とは違った印象の曲もあり、いろんな範囲をカバーしているなと感じたのですが、1曲ピックアップするとなるとやはりザ・佐伯youthKなこの曲ですね。もちろんメインボーカルは柿原さんですが、掛け合いも含めて歌唱面でも佐伯さんの存在感がある楽曲です。
 とにかく押韻譜割りが楽しい佐伯曲、今回は「仕事が終わらなくてヤバい!」という情景を描いているのがさらに面白いところ。労働に対する姿勢がとても日本人的であるという意味でも、「日本語ならではのラップ」というように感じました。その分実生活が忙しいタイミングで聴くと精神的に参りそうなので、余裕をもって聴きたいなとも思いましたが(笑)。とはいえサウンド的にはこれも得意のファンクな仕上がりで、楽しく聴ける楽曲になっています。

sync feat. 内村友美/坂本真綾

作詞:内村友美・坂本真綾
作曲・編曲:江口 亮


 
 多くの豪華シンガーとのデュエットをテーマにした坂本真綾さんのコンセプトアルバム「Duets」。いずれも魅力的な楽曲でしたが、初聴きから頭一つ抜けてお気に入りだったのが
la la larksの内村友美さんとデュエットしたこの曲です。作曲・編曲を担当するのは同じくla la larksのメンバーで、真綾さんへの楽曲提供も多い江口亮さん。この人はもう、大鉄板ですね。ストリングスやピアノを活かしたアレンジは上品でオトナの余裕を感じさせるサウンドなのですが、楽曲全体はとてもノリが良く、とてつもないワクワク感にも溢れているのが素晴らしいの一言です。もちろん、デュエットということでヴォーカルも同じく魅力的。互いが互いを追いかけたり、時に重なったりするサビのあたりに特にデュエットの良さが出ているなと感じました。

LET'S MUSIC/Sexy Zone

作詞:Kenta Urashima / nozomi* / H.U.B. 作曲:Andy Love / Joacim Persson / Johan Alkenas 編曲:Joacim Persson / Johan Alkenas ブラスアレンジ:CHOKKAKU



 昨年は名盤「POP×STEP!?」のリリースにレーベル移籍など音楽面でも大きなトピックがあり、このブログの10選でも上半期・通年と2度選曲したSexy Zone。今年は10周年のベストアルバムに収録された新曲「RIGHT NEXT TO YOU」も音楽ファンの間で話題になっていましたが、今回はこちらのシングルを選曲しました。
……と言いつつ、ローカルでしか聴けないこともあって再生回数はそこまで伸びていたわけではないのですが。とはいえ、10選を決めるにあたって改めて聴き返すとやはり良い曲だなと感じました。「パーティー・ファンク」と銘打ち、ブラスアレンジにはジャニーズソングの守り神・CHOKKAKUさんを起用。これでハズすわけがない!ダンスや顔の良さも流石の仕上がりで、MVも魅力的だと思います。あとはライブでも見ることができたので、1曲目で一気に会場のボルテージを上げていたのも印象に残ってますね。

おもいでしりとり/DIALOGUE+

作詞・作曲:田淵智也
編曲:睦月周平



 新進気鋭の声優ユニットDIALOGUE+UNISON SQUARE GARDEN田淵智也さんを音楽プロデューサーに据えたスタッフ陣のもと数々のステップを踏んでおり、9月にはこだわり抜かれた1stアルバム「DIALOGUE+1」をリリース。今最も勢いのあるグループという印象です。アルバム収録曲にも良いものが多く楽曲選びは迷ったのですが、今回はTVアニメ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』のOPテーマタイアップだったシングルの表題曲を選曲。Twitter有志企画の「#声優アーティスト楽曲大賞2021」では堂々の上半期第1位を獲得した人気曲でもあります。
 女性声優ボーカル×エモいメロ×ストリングスが映える編曲、というのはまさに10年代からの「アニソン」のど真ん中……というと言いすぎかもしれませんが、好んで聴いてきた曲調なので非常に耳馴染みが良いですね。この曲もそこで勝負しているので、「王道」という印象があります。加えて、タイトルの通り歌詞に仕込まれた"しりとり"のギミックがとても洒落ているのも好きなポイント。「嬉しい」「いつもありがとね」→……というふうに、歌詞表記では鍵括弧で括られているいくつかの言葉は全てしりとりの要領でつながっています。言葉をつないでいった先、楽曲的にもクライマックスとなるタイミングで"やっと言える"言葉はなんなのか?是非フルサイズで聴いて確認してみてください。

シアワセリクエスト/東山奈央

作詞:矢吹香那 作曲:前口ワタル / 矢吹香那 編曲:前口ワタル
chorus:りぶ



 東山奈央さんは今年もコンセプトアルバムに5thシングルにと粒ぞろいのリリースでした。今回は私の最推し作家である前口ワタルさんが参加したシングルc/wを選曲。前口さんに限った話でもないのですが、最近の東山さんソロワークスは彼女の代表作の一つである中川かのんちゃんの楽曲に関わっていたクリエイターの参加が続いていて、神のみファンとしては嬉しい気持ちになりますね。そのうえで、いずれもかのんちゃんの曲とは違った魅力のある東山さんの曲に仕上がっているのが流石だと思います。
 この「シアワセリクエスト」は渋谷系サウンドに乗せた恋の歌。と言ってもドラマチックな大恋愛の曲ではなく、幸せなカップルの日常を描いた楽曲です。暖かみのあるブラスセクションや、ディレクターが共通という縁から参加したらしい歌い手・りぶさんの男声コーラスも雰囲気を引き立たせ、歌詞の情景がバシッと浮かんできますね。
「未来のあなたの為 私を好きでいれば ずっと幸せ」という女性側のスタンスもツボでしたし、前口さんのファンとしては落ちサビ前のストリングスの動きが「これこれ~!」という馴染み深さでほっこり。全体として、休日の朝にぴったりの上質ポップスでした。

輝く永遠ヒストリー/マイキャラガールズ (cv.阿澄佳奈大久保瑠美加藤英美里伊藤かな恵牧野由依斎賀みつき)

作詞:素直元気 作曲:長岡成貢・桜川ひばり 編曲:長岡成貢



 この10選企画は他にもやっている方も多く、そうした方々に向けたレコメンドの側面も持っていると個人的には思っています。なのでなるべく聴いてもらいやすい選曲にしているつもりなのですが……すみません!この曲に関しては完全にそうした思考の真逆に行く曲です!キラッとプリ☆チャン』のゲーム筐体に実装された楽曲で、全国9ヶ所に存在するプリティーシリーズ公式ショップ「プリズムストーン」限定販売のCDにのみ収録。配信はおろか通販在庫も既になくなっているので、音源として聴くにはどこかに店頭在庫が存在する可能性に賭けるか、オークション等を見張るしかないというハードルの高さです。おまけにフル(CD収録)サイズも2分程度しかないため、コスパの面では正直オススメはできません。
 が、そういう要素を踏まえてもなお選曲してしまうほど自分の魂に刻まれているのがプリティーシリーズ×長岡成貢の音楽。ジャズ・ハウス系のサウンドで奏でられるキラキラした楽曲には10年経っても色褪せない魅力があり、久しぶりの新曲はやはり今年のトピックの一つでした。
 こちらの曲についてはオフィシャルで聴けるものが上に貼った30秒CMくらいしかなさそうなので、せめてもの参考として同じく長岡成貢さんによるプリティーシリーズ楽曲をいくつかピックアップして貼っておきます。ショート尺しか存在していないものもありますが、いずれも名曲なので聴いたことない方は是非!



総括

 毎年のことですが、「これは確実!」というレベルで刺さるものだと10には届かず、「これも良かったよね!」というものを入れていくと10では足りないという、難しい曲数だなあと思いながら選びました。限界まで悩んだらあとは自分の趣味を推していこう、と考えていたのもありますが、今回はMUTEKING・A応P・シアワセリクエストとスマイルカンパニー勢が多くなったなと思います。やはりネオ・アニソン(※2)界隈における自分の原点はここにあるな、と改めて感じました。あと、せっかくなので流れで宣伝なんですが、この辺の作家陣の名前に馴染みがある方は以下のクラウドファンディング(詳細は引用先スレッド)も協力してくれたら嬉しいです!


 話を戻して。10選外だと、印象に残っているのは和氣あず未さんの「恋する日常」、一柳隊(アサルトリリィ)の「OVERFLOW」、SparQlewの「Dance in the Twilight」などなどなどなど。アーティスト縛りで悩んだものだとやはり内田彩さんとDIALOGUE+ちゃんが激戦でしたね。今の声優アーティストでアツいのは誰かと聞かれたらこの2組を推します。それから、単曲をピックアップしてという観点ではなかったので10選には入れていないのですが、「2021年のベストアルバム」を選ぶなら間違いなく豊崎愛生さんの「caravan!です。安定のあたたかさがあり、何度もリピートして聴ける素晴らしい盤になっていました。次点で、上田麗奈さんの「Nebula」もアルバム特化型の魅力がありましたね。

 あとはやはり悩むのが非サブスク曲の扱い。レコメンドと考えるならサブスクで縛っても良い気がしますし、「10選」と謳ったプレイリストに欠けが発生してしまうのももどかしいんですが、純粋に楽曲を選ぶという意味ではひとまとめにするべきだとも思います。折衷案として、次からは「サブスクオンリーで10選+ローカルで5選」みたいな感じで最初から分けてみるのもアリかもな、と思いました。来年の10選が近づいたころにそれまでのリリースも踏まえて考えてみようと思います。

 というわけで、2021年の10選でした。いずれも名曲揃いですが、反面で今年は気付けなかった名曲、来年以降現れる名曲などなど引き続き新しい楽曲との出会いも楽しみに生きていきましょう。お読みいただきありがとうございました。


※1……ラジオでの発言を記憶頼りに思い返しているので、ニュアンス等々違っていたらごめんなさい
※2……「アニソン派!」にて伊藤翼さんが提唱した「この界隈の現状を表すのに"アニソン"という言葉は合わないのでは?」という問いかけの中で出てきたジャンル名。個人的に気に入ったのでひっそりと推していきたい