しちさん21 (hatena)

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『Vシネクスト 仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』完成披露 感想





 完成披露にて一足先に作品を鑑賞できましたので、ネタバレを控えつつ感想を。内容(特にシナリオ面)を具体的に語るようなことは避けますが、感想である以上内容を類推できるような文面が含まれる可能性はありますので未見の方はお気を付けください。

 Vシネマでは恒例になっている気もしますが、やはりTVシリーズとは一線を画す作風だったなというのが第一印象。というと同じスタッフ陣による『仮面ライダースペクター』を彷彿とさせますが、あれともまた違った雰囲気です。『セイバー』に限らず、ここ数年の仮面ライダー映画とは違った土俵にいるような作品で、個人的にはどこか「自主映画っぽい」という感覚が残っていますね。主に演出周りによるものですが、ミニマルでインディーズ的な魅力がある作品でした。ですのでVシネマという形態ではありますが、やはり劇場で見るのがベストなんじゃないかと思います。個人的にはラストシーン近辺の演出がすごく好きだったので、そこをしっかりと見るためにも早くもう一度見に行きたいですね(なんと最前列だったので舞台挨拶はとても良かったのですが、映画は見づらかった……)。
 一方で、「普段と違う演出」という観点で言うと、Vシネや配信になるとすぐに流血描写をやりがちなのは良くない傾向だなあと個人的には思ったり。特にニチアサ作品のVシネなんて基本的にキャラやガワは放送当時のものと共通なわけで、急にこれまでやっていない流血描写をされても違和感や安さの方が勝ってしまうんじゃないかと思うんですよね。本作に限った話ではないですが、そのあたりは一考の余地があるんじゃないかなあ……という、いちファンの意見でした。

 『セイバー』として見ると、壮大なファンタジーの世界観を構築していたTV本編とは打って変わって、衣装やロケーションも含めて現代劇の雰囲気を強めたつくりになっていたのが印象的です。その分本編とVシネマの連続性は若干薄れているところもあるので、個人的には「セイバー本編の続編/完結編」というよりは「セイバーのキャラや舞台設定が強く絡む派生作品」という感覚で見ていました。ただ、この点についてはそこまでマイナスな印象があるわけではないよ、というのは言っておきたいですね。表現が難しいのですが、あくまで「仮面ライダーセイバーの第49話」ではないよね、というだけで、「こんなのセイバーじゃない」とは思いませんでした。8年の歳月を経たレギュラーキャラの様子が垣間見えるシーンも散りばめられていましたし、そこは素直に嬉しかったです。まあ、メイン3人以外の描写については自分があまりハードルを高くしていなかったのもあると思いますので、これから見るという方は期待しすぎない程度に期待していただければ、ということで(笑)。
 一方のゲストキャラについて。短い時間の中でキャラを立てるのはシナリオや演出ももちろん大事なのですが、やはりキャスティングによるところが大きい気がします。そういう意味では『W』以来となるOGキャスト飛鳥凛さん、ベテラン枠ながら力強い「変身!」の掛け声が印象に残る橋本さとしさんと、どのキャラも上手い配役をされていたように思いますね。そして、個人的に最も強く印象に残ったのは木村了さん演じる間宮。木村さんは東映特撮へは『ゴースト』夏映画以来の参加ですが、本作は例年の特撮作品よりもややトーンを落とした作品でしたし、キャラクターも相まってアルゴスの時以上にそのキャリアが活きているなと感じました。先に述べたような現代劇の雰囲気づくりにも多大な貢献をされていたように思います。劇場版ゲストで参加されたキャストが異なる役で特撮再登板というのも珍しい気がしますし、何かしらの媒体で木村さんが本作について語られているのは見たいんですよね。劇場公開時のパンフにインタビューとかが載っていると嬉しいなあ。

 さて、ネタバレを避けるとこんなところでしょうか。TVとの作風の違いについてはなんとなく予想できていたのでそれによる困惑はあまりなかったのですが、舞台挨拶で登壇者の皆様も口をそろえて言っていた通り一筋縄では行かないシナリオになっていて、一度見ただけでは整理しきれない部分もあるなというのは率直な感想です。とはいえ製作陣的にもそういう印象を与えることを意識して作っているようなので、そこは想定通りなんでしょうね。最大の仕掛けの部分がまだなかなか解釈しきれていないので、今後2回3回と見たり他の方の考えも参考にしたりして固めていけたらいいなと思っています。もちろん、手探りで見ていく初見の感覚もそれはそれで貴重ですから、「一粒で二度おいしい」的な楽しみ方ができる作品になっているのかなという気がしますね。
 というわけで、一度目の味をしっかりと噛み締めつつ、再び見られる日を引き続き楽しみにしています!