しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

【映画感想】『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』



監督:山口恭平
脚本:香村純子


 1年の放送で独自のノリを定着させたゼンカイジャーと、調和が得意な優等生キラメイジャー。そんな2戦隊のVSは、やはりキラメイジャーを交えてのゼンカイジャー通常回、という印象で落ち着いていたように思います。というより、ここ数年のVSはVシネ枠に戻ったこともあって劇場枠だったころよりもライトな作風が基本になっているような気がしますね。それ自体はちょっと物足りなさもあるのですが、パンフレットのインタビューを読むと「強敵が出現したから力を合わせるみたいなのはやりたくない」という意向が企画当初からあったようなので、今回に関しては狙ったものでもあるのかなと思います。

 ゼンカイジャーはワルドの固有能力を軸にしたエピソードづくりが印象的な戦隊だったので、今回もそこを踏襲することで彼ら周辺はすっかり通常回の空気になっていました。一見バカバカしいワルドの能力に全力全開で乗っかり、どこかバカバカしい対抗策で勝利への道を切り拓いていく。ゼンカイジャーの放送終了からまだ2ヶ月程度ではありますが、なんだか懐かしい気持ちになりましたね。ちなみに今回の「焼肉」というテーマに関連したネタだと、細かいんですがデカレンジャーが出てきた理由が分かったときに軽く吹き出してしまいました。いやー、牛角のCMはマジで懐かしいな(笑)。
 そんな風にゼンカイジャーの個性が色濃く出たカルビワルドの焼肉空間。そこに投入されるキラメイジャーの初期メンバー5人が見どころのひとつでした。この時、ゼンカイジャーの空気に反発するタイプの面白さではなく自然に馴染むタイプの面白さを出せていたのはキラメイジャーならではだったんじゃないかと思います。相手のことを尊重するような距離感の取り方が意識されていた作品でしたし、いい意味で主張が強すぎない印象なんですよね。だからこそ好き勝手やってるゼンカイジャーのテンションにも自然と合わせられて、その上で「キラメイジャーらしさ」みたいなものも残せていたように感じました。「らしさ」と言えば、ちょっと面白かったのはキラメイジャーが揃って"いない"シーン。VS特有の前年度戦隊が揃っていないシーンはいつもキャストのスケジュール都合を感じてしまうのですが、本作では「そういえばキラメイジャーは(個々のプライベートを優先するので)"揃わない"ことも特徴の一つだったな」と思い出しました。冒頭の充瑠・為朝・瀬奈だけでマーベラスと相対するシーンや時雨・小夜さんのソロカットなど、これはこれでキラメイジャーの個性を演出するのに一役買っていたんじゃないかと思います。5人揃いでの撮影は全員変身のくだりに加えて2日かけたらしい焼肉空間と結構あったので、実は本当に演出意図としての別撮影なのかもしれませんけどね。

 メイン戦士10人がそんな風にゼンカイ時空で戦っている裏側で、真面目に話を進めていったのが追加/番外戦士たち、そして「センパイジャー」。この構成は結構面白かったですね。視点が程よく切り替わるので飽きずに見られましたし、各キャラクターの出番も均等だったように思います。
 センパイジャーのお二人、ゴーカイレッド/キャプテン・マーベラスルパンレッド/夜野魁利は思ったよりもずっと出番が多く、事件解決に向けて動いていたので物語的にも存在感があったのが嬉しかったです。センパイジャーとして誰がでるかはもちろんいろんな要因を加味して検討されたんだと思いますが、「カナエマストーン争奪戦に参加する海賊と快盗」という風に作品のフックになる2人が選ばれ、それがどちらも(ゼンカイジャー実質全話担当の)香村さんがTV本編でも書いてきたキャラクターなのはちょっとした運命を感じます。当然今回も脚本は香村さんなので印象もオリジナルに近く、魁利なんかは特にセリフの一言一言に元作品の要素が仕込まれていたのでその気の利きっぷりには思わず笑ってしまうほどでした。また、変身後アクションシーンでは彼らを含めたセンパイジャーの名乗りもありましたね。ゴーカイレッド、ルパンレッドはもちろんですが、他のレッドたちも声を含めて当時のバンクそのまま(だよね?)。この辺りはこの10年で東映特撮がレジェンドキャラの扱いについて試行錯誤してきた結果のようにも思いました。まあ近年でも戦記みたいな例はあるんですが(笑)、今回はこういう素直なファンサービスが嬉しかったですね。
 他にも、キカイトピアのリーダーとしてゼンカイジャーたちと共闘し、ポットデウスのことも贖罪と更生へ導くというドラマのあったステイシー、頼れる兄としてカッコいいところを見せていた宝路、宇宙海賊とついに出会った世界界族と追加戦士たちそれぞれに見どころがあったのですが、個人的に推したいのはシーナ姫ちゃん様改めマブシーナ女王様ですね。わりとキラメイジャーの中でも好きなキャラなんですが、今回大活躍でしたよね!?まさかキラメキゼンカイジュウギアのボイスがマブシーナ様だとは思いませんでした。言ってしまえばマブシーナ自体もそうなんですが、ゴツいビジュアルと可愛いボイスのギャップがとても良かったですね。「にせマブシーナ」も、お話的にはマブシーナの良かったところとして挙げにくいですが、メタ的な意味では動き・声ともに面白かったです。

 敢えて残念だったところをひとつだけ挙げると、やはり魔進キャストの不参加は惜しかったなと。もちろん議論はしたうえで今回は盛り込めなかったということではあるようなのですが、せめてメイン5人の相方たちだけでもボイス付きで登場して欲しかったなというのは思ってしまいます。そんな中で巨大戦の必殺技という形でも混ぜ込んでくれたのは山口メイン監督の面目躍如という気はしましたし、脚本側(と思う)でも博多南さんや柿原さんに触れるなどキラメイジャーへのリスペクトは感じたんですけどね。

 総括して、扱われているシリーズそれぞれに対してバランスよく見どころがあったのが良かったなと思います。センパイジャーの存在もありますが、定番のVSとは一風違った味わいがあるのもゼンカイジャーらしいなと感じる作品でした。