しちさん21 (hatena)

アニメや特撮系を中心に、楽曲・映画・イベントなどの感想を書きます。

Hop Step Sing! VRライブ『ほぷ☆サマ 2nd』感想

hop_summer2_top

 2020年の『ほぷ☆サマ』に続く第2弾。前回よりも的確に進化しているのが感じられ、大満足のライブとなりました。とはいえ、VRライブはまだまだ新規開拓中の分野。さらなる進化に向けた要望も含め、感想を書いていきたいと思います。
 また、今回もYouTube/ニコ生(中国向け?にはbilibiliも)での同時中継があり、そのアーカイブも公開中です(2022/3/25現在。ニコ生TSは2022/3/31まで)。

※本記事中のスクリーンショットVR鑑賞中のキャプチャとニコ生アーカイブのスクショを織り交ぜています

【生中継アーカイブ
YouTube


ニコニコ生放送


# 入場~開演前

 hop_summer2_001
巨大な氷像と化したHSS!のみなさん

 前回同様、専用アプリとライブデータを事前にDLして入場。すると、眼前に広がるのは真冬の海。「サマー」と題しているのにも関わらず前回(10月開催)も今回(3月開催)もまったく夏ではない、というのが定番ネタのようになっているほぷサマらしい遊び心を感じます。

 また、今回は事前企画として歴代MVの衣装展示が行われていました。

hop_summer2_002

hop_summer2_003
デビュー曲から最新曲まで各衣裳が展示。ハッピーポーはやはりクールで好き

 こちらは「これまでの歴史を感じられる」「開演前からライブに向けて気持ちを高められる」といった利点のある良企画であると同時に、入場時のトラブル対策の側面も大きい気がします。VRライブでは通常の配信ライブに比べて技術的なトラブルも多いと思いますし、早めの入場(動作確認)を促す施策を用意するのはスマートなやり方だと感じました。実際、前回のライブに比べて移動などの操作性が変わっていたこともあり、事前に入場して操作を確認することができたのはとてもありがたかったです。
 気になったのは、開催前夜に一度データDL・入場を完了させていたのにも関わらず、開演前に再度入場しようとしたらデータDLも再び走ったこと。結果的には無事時間前に入場できましたが、タイミングが遅れてたらちょっと危なかったかもしれません。明確な原因はよくわかっていないですがハッシュタグの様子を見ると自分だけに起こった事象でもなさそうだったので、事前DL関連には引き続き課題もあるのかなと感じました。

# ライブ前半【海上ステージ】

 開演時間を迎え、諸注意の読み上げが終わるといよいよライブスタート。雲が切れて晴れ間が見え、自動的に本会場へと移動します。

hop_summer2_004

hop_summer2_005
冬から夏へ一気にワープ

 青空が広がる真夏のステージは爽快感に溢れていて、先ほどまでの寒空とのギャップも抜群。こうした移動もまさに「VRならでは」の演出ですね(この点については後半さらにすごくなりますが、それは後述!)。

M1. 真夏のヒロイン大作戦

hop_summer2_006


 移動が完了すると、氷像が溶けて中から姿を現す(!)Hop Step Sing!の面々。その驚きのまま、1曲目に届けられたナンバーは「真夏のヒロイン大作戦」。ライブタイトル・ステージに沿ったサマーチューン、そして前回公演のセットリストには含まれていなかった初披露の楽曲とあり、一気に会場を盛り上げる選曲でした。

 オープニングナンバーを歌い終えた3人は、そのままMCパートへ。個人的には今回最大のポイントと感じたところですが、前回ライブでは事前収録だったMCが今回はリアルタイムのトークへと変化していました。配信番組「ほぷなま」のように、担当声優3名が演じるモーションキャプチャートークという感じですね。

hop_summer2_007
お馴染みHSSポーズも生披露

 前回公演には「歌唱やダンスは問題ないが、MCが収録だとライブ感が薄れてしまう」という印象があったので、今回の采配はとても良かったと思います。収録パートとリアルタイムパートの切り替えの「間」はどうしても発生しますが、わりとスムーズに切り替わるのでライブを見る上でそれ自体がストレスになることはありませんでした。ただ、1曲ごとにMCを挟むライブ構成についてはもっと良くなる余地があると思います。この点では2曲連続披露などもあった前回公演が上回っていたかなと感じますが、今回はほぼ全曲披露したうえで全体の尺は90分程度に収まっていることを踏まえると単純に持ち曲が多くないのが原因かもしれませんね。やはり楽曲も増やして欲しい!と強く感じます。

M2. Party Nightがきこえたら

hop_summer2_008

hop_summer2_009

 続く2曲目は、こちらも初披露となる3rdシングルc/w曲「Party Nightがきこえたら」。「真夏のヒロイン大作戦」もそうですが、c/w曲にはそもそもMVが存在していないためダンスパフォーマンスが世に出るのは初めてです。どうしてもMV曲に比べて影が薄くなってしまうカップリング曲ですが、それらに負けず劣らずの名曲であるこの2曲をしっかり披露してくれたのはファンには嬉しいサプライズ。弾むような振付のかわいらしさ・噴水と虹の演出も注目ポイントでした。

M3. 覗かないでNAKEDハート

hop_summer2_010

 前半ライブパートラストを飾るのは、ダンサブルな人気曲「覗かないでNAKEDハート」。楽曲的にも大きな聴かせどころである間奏のギタープレイをリピートし、花道でのソロダンスを魅せるのは前回同様です。この曲に限ったことではないのですが、歌唱パートは事前収録だからこそ、こうした演出でライブ感を引き立たせてくれるのがとても魅力的ですね。今回は「浮かび上がってくる亀の甲羅を花道にする」「ダンス中のメンバーの上をイルカがジャンプしていく」という演出もあり、前回よりしっかりパワーアップしているのも素晴らしかったです。

# 企画コーナー

 中盤はリアルタイムMCならではの企画として、少し長めに尺を取ってゲームコーナーを展開。モーションキャプチャーを活かした(?)手押し相撲・椅子取りゲームや、アイドル番組定番のキュン台詞対決が行われました。

hop_summer2_011
直接は触れあっていない(ように見える)手押し相撲がなんともシュール

 キュン台詞対決では露出で釣りに来るみかさを「下世話」と評したり、椅子取りゲームではプロテインパワーと称して強引に押しのけて着席したりと、全体的に識理の言動にキレがあったのが印象に残ります。ポイント的には「最終対決で大逆転」のお約束によるものでしたが、ほぷサマクイーンの称号にふさわしい(バラエティ的な)活躍をしていたように思いますね。
 そんな風に楽しんではいたのですが、企画コーナーがある構成はやはりライブとしては物足りないのも正直なところ。とはいえ、先述したようにこれは楽曲数が少ないのも影響していることでしょう。楽曲メイン+ちょっとのMCだけでライブを組み立てられるようになる日まで、さらなる進化の余地として受け止めておこうと思います。

# ライブ後半【竜宮城ステージ】

 ゲームを終えると、ステージが大きく振動。何事かと周囲を見回すと、なんとこれまで歌っていたステージがクジラの背中だったことが判明します。

hop_summer2_012

hop_summer2_013
いったん食べられるのはお約束

 というわけで、後半戦は恒例のステージ移動。海中へと潜っていくことで、海底に存在する竜宮城のようなステージに移動します。

hop_summer2_014

hop_summer2_015

hop_summer2_016
クラゲの誘導灯に沿って大移動。洞窟を抜けた先には立派な城が!

 前回の銭湯→神社のワープもリアルの位置関係に捉われない発想でしたが、今回はその時以上のインパクトがある移動で度肝を抜かれました。そして後半ステージの素晴らしいところは、海中とあって前後左右だけでなく上下にも自在に動けること。これまで以上に自由度の高い、そして新しい操作性は非常に刺激的な体験でした。

 一方で、今回演出面で最も改善の余地があると感じたのもこのステージ。圧倒的な自由度を得た観客のイルカたちは、当然パフォーマーの眼前に向かいます。すると、観客によってステージがまるで見えなくなってしまうんですよね(笑)。アバター表示をOFFにすることで見えるようにはなるんですが、それだと観客が自分1人になってしまうので、やや寂しい気持ちになってしまうのが痛し痒しでした。

hop_summer2_017
夥しい数のイルカたち

 次回のライブを行う際は、このあたりを上手く両立させられるような改善に期待したいですね。せっかくの移動可能範囲を制限してしまうのはもったいないので、ステージの視界を遮るような特定のエリアにいるアバターは自動的に透明化されるとか、アバター表示OFFにした場合も雰囲気を出すためにNPC的な観客アバターを配置するとか……もしかすると技術的・演出的なハードルもあるのかもしれませんが、乗り越えていって欲しいなと思います。

M4. アストラル・ピース

hop_summer2_018

 移動休憩が終わり、(文字通り上方から)ステージへと「舞い降りて」きたのは仁衣菜でした。こうした登場演出でも高低をしっかり活用しているのが魅力的ですね。

hop_summer2_019
私に仁衣菜が舞い降りた!

 後半戦のスタートは、彼女のソロ曲である「アストラル・ピース」。前回ライブでは3人での歌唱だったため、オリジナル通りのソロ歌唱は今回初披露となりました。個人的にはプロジェクトを代表する曲のひとつだと思っているので前回の3人歌唱は念願だったのですが、同じことをやるのももったいないのでソロが見られたのは良い収穫。一度全員がはけた後の後半戦なので、スムーズにソロパフォーマンスを始められるのも上手い配置だったのではないでしょうか。

M5. ハッピーポー

hop_summer2_020

 仁衣菜のソロタイムが終わると竜宮城の中から識理とみかさも合流し、最新曲「ハッピーポー」を披露。椅子を出現させて座ったり、ステージがネオンのようにライトアップされたりと、オリジナルのMVを踏襲した演出が存分に行われます。もちろんアップで見るのも良かったのですが、ちょっと下がってステージ全体を見渡すのもとても綺麗。移動が自由なVRライブであるからこそ、いろんな視点から楽しめる演出が意識されているなと感じる1曲でした。

M6. キセキ的Shining!

hop_summer2_021

hop_summer2_022

 最後に披露するのは、デビュー曲である「キセキ的Shining!」。始まりのワクワク感はもちろん、同時にこれまでの思い出を想起させるようなエンディングらしさも備えた名曲です。楽しかったライブを振り返りつつ、さらなる未来に想いを馳せる……そんな魅力に溢れたこの楽曲で、本編を見事に締め括りました。

EN1. 気ままに☆サマーバケーション

hop_summer2_023

hop_summer2_024

 全6曲を歌い終えて退場した3人ですが、今回はそれだけでは終わりません。姿が見えなくなってもなお、会場裏でのやり取りが聞こえてきます。声援や拍手でのアンコールはライブの性質上難しいですが、この流れを見て誰もがアンコールを期待していたのは間違いないでしょう。
 というわけで、そんな想いに応えた3人は再びステージへ。歌うのはもちろん、とびきりのサマーチューン「気ままに☆サマーバケーション」です。HSS!曲の中でも最もハイテンションなこの曲によって、最後まで高まり続けたこちらの熱気も最高潮に。最後の挨拶ではHop Step Sing!としてこれからもさらなる挑戦をしていくことを宣言し、名残惜しくもライブはここで閉幕となりました。

hop_summer2_025
光の射す方へ……

 また、終演後にはお土産として玉手箱が目の前に出現。今回はこちらを開くことで退場するシステムになっていました。中身は見たいけれど、開けてしまったら会場を去ることになってしまう……そんな気持ちはまさに浦島太郎に出てくる玉手箱にも通ずるような気持ちで、最後まで洒落の効いた演出が徹底されていたように思いました。

hop_summer2_026
箱を開けるとぷちキャラが登場し、最後の挨拶。デフォルメがカワイイ

# 総括、今後の展望

 総じて、前回物足りなかった箇所を的確に抑えているため、進化が非常に実感しやすいライブでした。MCのリアルタイム化などは個人的にもアンケートに記載した内容なので、(自分の意見と言うより、全体として)視聴者の意見がフィードバックされていると感じられたのも地味ながら好感度が高まるポイント。これから先も、大筋で自分が求めている方向に進化していってくれるのでは、と期待ができる内容でした。
 VRならではのポイントは的確に改善・進化していた分、さらに進化を期待してしまうのはライブとしての構成ですね。もちろん、真夏のヒロイン大作戦で始まる今回のセットリストもとても良かったですが、繰り返すように楽曲の絶対数がまだ少ないため、そこを強化すればもっと良くできるのではないかと思ってしまいます。近年は特に「VRMVを作成するため、その題材になる楽曲を制作する」という優先順なのかなと推察していますが、ライブで使える手札を増やすためにも一気に楽曲を増やす機会もあったら嬉しいですね。単純に、楽曲クオリティが高いので増やして欲しいなという願望込みでもあるんですが(笑)。具体的な要望としては、識理とみかさのソロ曲を含む新曲が盛り盛りのフルアルバムを聴いてみたいなとずっと思っています。
 また、こちらも推測になるのですが、今回アンコールの「気ままに☆サマーバケーション」では間奏の煽りも含めた歌唱音源(と、ダンスも?)を前回ライブから流用していたような気がします。VR鑑賞中には気付かなかったことですし、それ自体が悪いというわけでは無いのですが、やはり「ライブ」である以上はある程度その場限りのパフォーマンスであって欲しいなという気持ちもあり、もしも一部を流用したまま回数を重ねるとそこで熱量を落としてしまうのではという懸念を持ちました。こんな心配は杞憂であって当然にやってくれる(もしくはそもそも勘違いで、既にやっている)だろうと期待していますが、今後回数を重ねていく際には「前回と同じパフォーマンスだな」と感じさせないよう、スケジュール等との兼ね合いを見つつ披露済みの曲も必要に応じてアレンジや再録をして欲しいですね。

 歩調こそゆっくりではあるものの、初のMVリリースがあった2016年から今に至るまで途切れることなく定期的な活動をしてくれているのはとてもありがたく思います。近年ではアニメ寄りのコンテンツでも3Dキャラクターによる音楽ライブなどがチラホラと増えているように感じますが、HSS!はこの分野の先駆者としてこれからも力の入った活動を見せてくれることでしょう。彼女たちが見せてくれる未来を、引き続き楽しみにしています!